今こそ求められる、他者を知り自分を知る学び新しい技術によって急激な変化を遂げる現代社会。多様性を尊重したいと思いながらも分断が進む世界において、どのような学びが必要になるのでしょうか。明治23(1890)年に公表された國學院設立趣意書には「近時各国人ヲ教フル法、必先其国史、国文、国法ヲ授ケ、次ニ百科ノ学ニ従事セシムルヲ常トス」という言葉があります。これは、歴史、文学、法律など日本人の基となる学術分野を学ぶことに加え、世界の学術・学芸についても修めることの重要性を説いたものです。世界を知り、改めて自国の在り方を問い直すことは國學院大學の研究教育の基本方針となっています。大学の学びにおいて、「問い直す」ことは大切です。同じ資料を根拠にしながらも自分と異なる意見を主張する学友に出会うことはとても意義のあることです。与えられた課題について、複眼的な視点から「問い直す」ことにより、自身の考えも深まり、課題の本質に迫ることができるのです。分断の時代だからこそ、人間と人間との絆をかけがえのないものとして、自分とは異なる価値観を持つ他者を認め、自身の考えも深化させていくという人材の育成を目指したいと思います。観光まちづくり学部は、開設して4年目を迎えました。十を超える地域と「包括連携協定」を結び、学生たちが実際に現地に赴き、その地域の文化や歴史を学ぶ中で、地域がもつ独自の魅力を掘り起こしています。その取り組みは、地域の活性化はもちろん、各地域に伝わる固有の文化を照らすことにもつながっています。また、国内だけでなく、令和4(2022)年度に、日本研究に伝統を持つベルギーのルーヴェン・カトリック大学と協定を結び、学術交流、学生交換を推進するなど、海外の大学との連携も強化しています。『論語』の中で、孔子は「学びて思はざれば則ち罔し。思ひて学ばざれば則ち殆し」と説きました。先人の知の蓄積を学び、日々、自身の学びを深めてください。大学は、国内外から集った多様な価値観・背景を持った人と出会い、学び合うことができる空間です。先人に学び、学友に学ぶことは、自己のあり方を問い直す営みとなり、新しい自分を見つける契機になります。皆さんも國學院大學で、未知の自分に出会う挑戦をしてみませんか。すなわくらすなわあやう國學院大學学長針本正行[経歴]1951年生まれ。國學院大學学長、博士(文学)。1974年に國學院大學文学部文学科卒業後、1979年に國學院大學大学院文学研究科博士課程後期単位取得満期退学。2019年4月に國學院大學学長に就任し、現在に至る。研究分野は、平安時代文学。 022
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