2.熊本県の伝統野菜2006年に伝統野菜15品目を「ひご野菜(表3)」に認定し、ブランド化を図天草と芦北地方では、多くの南方系の植物が見られます。この海域が黒潮から分岐した対馬海流の影響を受けているためです。特に東シナ海に接している天草西海岸はさらに温暖で、暖流が直接岸を洗う長崎県の五島と共通する植物も見られます。この地域を特徴づける植物として、リュウビンタイ、ヘゴ、オオタニワタリ、サツマサンキライ、アオノクマタケラン、ハカマカズラ、ハマジンチョウ、ヒメキランソウ、ホソバワダンなどがあります。また、距離的に中国大陸と近いためか、国内ではこの地域のみに見られる大陸と共通する植物も見られます。タイヨウシダ、アマクサツチトリモチ、ウスユキクチナシグサなどです。 九州中央を南北に走る脊梁山地は、日本で最も古い陸地の一つとされ、四国・近畿地方南部とともに太古からずっと海上に出ていた地域です。ここには、襲速紀要素とよばれる日本固有の植物が多く見られます。ヒメシャラ、ユクノキ、ツクシシャクナゲ、キレンゲショウマ、ハガクレツリフネ、オオバヨメナなどです。また、この地域には石灰岩の層が北東から南西の方向へ走っており、石灰岩地特有の特殊な植物が多く見られます。イチョウシダ、タチデンダ、ツクシクサボタン、ヤマトグサ、ザリコミ、キビナワシロイチゴなどです。しかしながら、これらの植物も、森林伐採、各種開発行為、人工造林、大量採集、遷移の進行、外来植物の繁茂、動物の食害など、多様な原因によって生育地の劣化や減少が進み、希少化傾向の進行が顕在化しています。 今後は、地域住民を巻き込み、医学・薬学・農学など様々なバックグラウンドから多角的なアプローチを図り、保全、利活用に迫っていく必要があると考えられます。 熊本県は全国有数の農業県ですが、多種多様な品目を生産しているという点で、ほかの農業県とは違った特徴を持っています。品目別の生産高をみると、ナスやショウガ、イチゴ、シイタケ、メロンなど約20品目が全国トップ10入りの常連です。また、在来野菜など生産量は少ないながらも、地域に根付いて作られ続けてきた風味や形に個性がある農産物も多いのです。 熊本県は2005年から順次、県の風土とかかわりが深く伝統的に栽培されてきた27品目を「くまもとふるさと野菜(表2)」に認定しました。熊本市もってきています。それでも県内に野菜の認定制度が二つ存在することもあり、
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