熊本大学の教養教育 肥後熊本学
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図1.熊本県の温泉施設と泉質の分布 肥後の温泉科学 横瀬久芳 ま1.はじめに 2001 年に地球環境の保全等を目的として環境省設置法が施行されました。この法律の第四条で「十三 自然公園及び温泉の保護及び整備並びにこれらに関する事業の振興に関すること」とあり、温泉が環境省の管轄だと分かります。しかし、遡ること 1948 年に、初めて温泉法を制定したのは厚生省であり、数度の改正の後、環境省へ移管され現在に至り熊本県には、含よう素泉を除く10種類中9種類の療養泉が存在しています。しかも、それらの温泉は、熊本市を中心に半径80㎞圏内に収まり、肥後は温泉天国と言っても過言ではないかもしれません(図1)。肥後の温泉科学では、そんな多彩な温泉群を科学的に紐解きます。 温泉大国日本は古くから“湯治(とうじ)文化”によって健康増進を実践してきました。露天風呂の解放感に浸りながら、ふと“この温泉の効能は?”とか“なんでここに温泉が湧いているのだろう?”と思ったりもします。水道水を温めたシャワーとは違う何かが、私たちを遠くの温泉地に誘います。ですが、露天風呂で思いついたこれらの素朴な疑問ですら、実は自然科学,医学、社会学などを総動員して、自然環境と人間活動の関連を考察する必要があるのです。

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