3.火山活動と温泉図3 火山性温泉のでき方の模式図(Giggenbach,1988を基に作成) 酸性泉(0.3%): pH3未満の温泉は、地獄温泉と黒川温泉に存在し、それぞれ夜峰火山と涌蓋火山群地域に対応します。 このように泉質の分布域は、周辺の地質学的区分に対応するように見えます。つまり、泉質の差は、地下深部プロセスである温泉(熱水)循環と岩石の化学反応の理解につながり、多彩な泉質の起源に迫れることを暗示します。 温泉は、成因の違いによって火山性温泉と非火山性温泉の二種類に大別されています。熊本県の療養泉は、ほぼ火山活動地域に存在している火山性温泉とみなせます。それは九州の中央部に位置する熊本が、別府-島原地溝帯と呼ばれる火山活動と地震活動が盛んな地域に含まれることと無縁ではありません。 逆に言うと、目立った火山地形の認められない地域は、概して非火山性温泉として認識され、人吉盆地周辺の温泉もそのように考えられることも多いようです。しかし、人吉盆地も鹿児島地溝帯の北縁部と考えられており(小林・矢島、2007)、熊本市周辺の地質構造と類似します。事実、人吉・水俣地方にも、やはり第四紀以降(約260万年以降)に活動した火山地域が分布していて(例えば、横瀬 他、1999)、湯の児温泉,湯の鶴温泉、湯浦温泉,人吉温泉がその近傍に位置付けられます。さらに、目立った火山地形を示さない有明海沿岸の大矢野島や宇土半島にも第四紀以降に活動した新しい火山群が確認されており(横瀬 他、1998)、松島温泉・弓ヶ浜温泉・赤瀬温泉も火山性温泉の可能性が高いと言えます。このように肥後の温泉は、大部分が火山性温泉なのです。
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