熊本大学の教養教育 肥後熊本学
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H2S, 30; HCl, 10)を分離します。各成分のマグマに対する溶けやすさは、HCl > H2O >H2SCO2の順に変化するため、マグマの上昇とマグマ溜の形成に関>>硫描いてあります。地球深部の高温地帯で発生したマグマは、地表に向かって上昇します。多くの場合、地下数㎞付近にマグマ溜を形成すると考えられております。しかし、マントルで発生したマグマが全て地上に現れて火山を作る訳ではありません。この上昇してきたマグマが熱源となり、また泉質を左右する化学物質(火山ガス)の供給源となるのです。既に述べたように、温泉水の原料は天水で、マグマや地下の岩石との反応で泉質という風味が付け加わります。マグマから分離した熱水や火山ガスが天水に吹き込まれ、効率よく天水は加熱されます。加熱され出来上がった温泉(地熱水)は軽くなり、火山体の隙間(断層や割れ目)を上昇していきます。この上昇流が火山体の周囲から天水を引き込み、天水から温泉水への循環サイクルが構築されます。 低温低圧下に置かれたマグマは、過飽和な火山ガス成分(体積比:H2O, 1000; CO2, 50; 連して、各成分の分離は空間的にも時間的にも変化することが容易に想像されます。このようなプロセスを経てマグマの周囲に様々な泉質の温泉が構築されてきます。 “温泉=硫黄の香り”と言う人も多い事でしょう。もっとも、硫黄の単体はほとんど匂いませんが、硫化水素(H2S:ゆで卵の匂い)と亜硫酸ガス(SO2:マッチの焼けるに匂い)の入り混じった匂い(あるいは臭い)を硫黄(湯泡:ユワウ)臭と表現しています。マグマから分離した火山ガス成分が臭いの正体である事が多いのです。 温泉水中で硫黄(S)は、H2S、HS-、S、SO2 HSO4-、SO42-など実に6種類もの分子やイオンの形の化学種が存在できます。さらに、過飽和な温泉中では、自然硫黄(S)として存在します。これらの変化は、温泉水の持つ水素イオン濃度や酸化還元電位に大きく左右されます。火山ガスが酸化的天水(火口周辺など)と反応すると、HSO4-や SO42-が卓越する図3は、温泉形成の視点から地下浅所に上昇してきたマグマがどのように影響するかをSO23-1 硫黄泉と硫酸塩泉図4-1 わいた温泉郷山川温泉(硫黄泉) 図4-2 阿蘇内牧温泉(硫酸塩泉)

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