図5 温泉に含まれる九州中央部のHe同位体比の研究 rg1/kumamoto/kumamoto.html) 3-2 炭酸泉・炭酸水素塩泉(HCO3-)としても存在します。しかし、この化学反応における炭酸ガス濃度はそれほど高1941ppm(金桁温泉)と4194ppm(弓ヶ浜温泉)に達します。両地域とも有明海に面した酸塩泉となり、還元的天水(火山から離れた深層地下水)ならH2SやHS-が含まれる硫黄泉が主体となります。 還元的な地下の環境で安定していた硫黄泉は、浴槽に注がれると空気と触れ合い酸化反応が進みます。その結果、H2SやHS-が酸化されてお風呂の中で硫黄の微粒子が析出し始めます。この微粒子が成長する過程で温泉の色が水色(図4-1:山川温泉)や緑色(図4-2:内牧温泉)そして白色などに変化します。これらは、析出粒子による光の散乱及び吸収現象として説明されています。 二酸化炭素を多く含む泉質には、炭酸水素塩泉や炭酸泉があります。二酸化炭素は、空気中や土壌中にも存在するため、天水中に入り込んだ炭酸ガス(CO2:gas)が溶け込んだ二酸化炭素(CO2:aq +H2O ⇔ H2CO3)に代わり、さらに地中などでは炭酸水素イオンくなく、反応によって生成される天水中のHCO3-濃度も100ppm未満のことが多いです。 一方、熊本県の温泉に含まれる炭酸ガスと炭酸水素イオン濃度の最大値は、それぞれ火山地帯です。 温泉水に含まれる高濃度炭酸ガスの研究は、炭酸泉で有名な大分県の長湯温泉、炭酸鉱泉で有名な九重連山東側、そして雲仙火山の周辺地域で盛んに行われています(例えば、大沢・西村,2016)。これらの研究では、炭酸ガスを多量に含有する温泉は、マグマから分離した火山ガスが起源であると推定しています。また、図5に示したように、中部九州全域における温泉あるいは火山ガス中のHe同位体比の研究から、温泉水には深部マントル起源のHe (産業総合研究所深部流体グループより:https://unit.aist.go.jp/ievg/crufluid-ガスが多く含まれている事を示しています。図5より弓ヶ浜温泉や金桁温泉を含め、九重連
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