図6 温泉水による石灰華(うろこ状:スケール、ミニチュア石灰華段),弓ヶ浜温泉 3-3. 温泉の溶存成分量と泉質(塩化物泉と単純温泉)山や島原半島とともに高いHe同位体比が示されています。深部マントル起源の希ガスが認められる地域は、まさに別府島原地溝帯と重なっており、熊本の炭酸泉や炭酸水素塩泉が地下深くのプロセスとリンクしている可能性を示唆します。九州山地を隔てた人吉盆地にも炭酸泉や炭酸水素塩泉が存在していますが、二酸化炭素の起源に関するデータはまだ出ていません。しかし、鹿児島地溝帯の北方延長(小林・矢野,2007)と考えるなら同じように深部起源の可能性は高いと言えるでしょう。 地下深くにおける高圧下では、二酸化炭素が天水に多く溶ける事が可能です。そしてそれは、炭酸水素イオンへと変化し、多くのカルシュウムイオンが温泉水中に溶け込むことを可能にします。しかし、地表に温泉が湧出すると減圧効果で水溶液中の二酸化炭素が抜けて、炭酸カルシュウム(CaCO3)が析出します(図6)。これは、鍾乳洞で鍾乳石が出来る化学反応と同じで、しばしば温泉地では石灰華や噴泉塔が構築されます。日本各地でそれらは、天然記念物に指定されています。 温泉水中の陰イオンとして塩素イオンを多く含む泉質は塩化物泉と呼ばれます。塩化物泉は、海に近い海岸周辺だけではなく、海と全く関係のない山の中でも湧出します。 海岸周辺の塩化物泉は、体液よりも溶存元素が多い 10000 ㎎/㎏以上の温泉が、熊本県では、把握できた 405 件中 9 件が該当しました(天草下島、芦北・水俣、宇城・八代、熊本平野西)。多くは、1000mを起こす深層ボーリングによって揚湯されています。泉質的に硫酸イオン濃度が低い事から、地下に浸透した現海水ではなく、古い時代に地層や断層破砕帯に蓄えられた海水(化石海水)と考えられます。溶存物質の総量は 31600 ㎎/㎏(海水は約 34000 ㎎/㎏)に達します。また、源泉温度も低く、地下増温率と調和的な非火山性温泉とみなせます。化石海水の高張性温泉は、火山地帯の温泉と違って天水の循環サイクルがありません。そのため、限られた資源となります。温泉水を汲み上げすぎると上部の地下水が混入して薄ま
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