熊本大学 工学部案内
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ノづくりの根元となる機械要素技術が様々な分野で応用できるよう研究に取り組んでいる川島 扶美子准教授。とくに力を入れているのが『高温強度』で、金属が高温でどのような強度を示すかの研究を行っています。「具体的には650℃の高温に金属を加熱して荷重をかけ続ける『クリープ試験』というもので、試験機に金属(ハガネ)を固定し、重りで荷重をかけてハガネを引っ張ったまま炉で加熱します。温度と時間を測りながら破断、つまり損傷が生じる過程を観察しますが、たとえば50%、75%、90%の状態を比較したい場合、破断まで3カ月だとすると1.5カ月経過した時点で実験を止めてカットすれば、50%の損傷が生じた断面を観察できるわけです」 とくに川島准教授のもとでは、学生による協力のもと、マンパワーを生かした試験を行っているのが特徴です。「2メートル四方程度のシート状になった金属組織写真に現れる損傷を手作業で数えてもらうとか。人手がないと出来ない大量な観察をもとにデータを集めています。学生たちは苦労していますよ、構内の廊下に大きなシートを広げて地道な作業ですから。ですが、こうした研究結果によって、損傷が見つかった場合に残り何年もつかを予想できるようになります。これまでに火力発電所で『TypeⅣ(フォー)損傷』と呼ばれるクリープによる損傷事故がたびたび起きていますが。同様の事故が発生した場合の判断材料として役立つことを目指しています」マンパワーを生かした長期試験が大学の強みPROFILE1988年 熊本大学教育学部附属中学校卒業、1991年 熊本県立熊本高等学校卒業、1996年 東京大学工学部機械工学科卒業、1998年 東京大学大学院工学系研究科修士課程 機械工学専攻 修了、同年 (株)三菱重工業へ入社。2008年 熊本大学大学院自然科学研究科 博士後期課程 産業創造工学科 修了、2011年(株)三菱重工業退社。同年4月に熊本大学大学院自然科学研究科へ採用。川島 扶美子Fumiko KAWASHIMA准教授工学部 機械数理工学科『高温強度』と『材料特性』、素材がもつ可能性を見極め、未来へと繋げるクリープ試験後の破断した試験片引張圧縮や各種波形の疲労試験が可能な材料強度試験装置モ教員特集26

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