熊本大学 工学部案内
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化学、物理学、医学、生物学、工学といった様々な学問が融合したバイオテクノロジー。新留 琢郎教授の研究室では、ナノ材料の特徴的な性質を生かして新しい治療技術に発展させていく研究を進めています。「様々なナノ材料の中でも、とくに私たちが注目しているのが“金”と“銀”のナノ粒子です。これらを医療分野に応用し、体内へ効果的に薬を運ぶ『ドラッグデリバリー』の研究を行っています。たとえば、金や銀のナノ粒子に近赤外光を照射することで、病気になった部位だけを加熱できるんです。そして、そのとき発生した熱で金や銀でコーティングしていた薬を効果的に放出できる。そうした仕組みを作ろうと、研究に取り組んでいます」 研究に用いるナノ粒子を、自分たちの手で作り出している新留教授の研究室。とくに銀ナノ粒子は抗菌活性を持つことが知られていて、薬の運び屋としての役割だけでなく、ナノ粒子そのものが“薬”にもなると言うから驚きです。「銀ナノ粒子の表面に金ナノ粒子をコーティングします。これを感染部分に運び、そこに近赤外光をあてると、ナノ粒子が変形して、内部にある銀が外へ出てきて、抗菌作用を示します。金コートは銀の毒性を抑える働きがありますから、光を当てたところだけで抗菌作用が現れ、副作用を抑えることができるんです」。金属のナノ材料を使って薬を運び、これまでは難しかった感染症などの病気を治そうと医学部と共同で研究開発を進めている新留教授。2017年には、研究成果をまとめた論文がイギリスで発表されました。薬の運搬だけでなく“銀”そのものが薬となるPROFILE1966年鹿児島生まれ。1994年九州大学大学院理学研究科化学専攻博士課程修了、博士(理学)取得。長崎大学工学部応用化学科 助手、文部科学省在外研究員(米国ピッツバーグ大学薬学部)、長崎大学大学院生産科学研究科 助手、九州大学大学院工学研究院応用化学部門 助教授、九州大学大学院工学研究院応用化学部門 准教授、熊本大学大学院自然科学研究科 産業創造工学専攻 物質生命化学講座 教授、2016年12月から熊本大学大学院先端科学研究部 生体関連材料分野 教授、現在に至る。新留 琢郎Takuro NIIDOME教授工学部 材料・応用化学科金・銀のナノ粒子と光照射を組み合わせたドラッグデリバリーで医療に光明をもたらす光でコントロールする銀ナノ粒子からの銀イオンの放出銀ナノプレートの電子顕微鏡写真化教員特集42

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