熊本大学案内 2022
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 脳の病気に対する薬の開発は、大変困難です。その理由の一つとして、脳の入り口で薬をシャットアウトしてしまうことが挙げられます(血液脳関門)。私たちは、脳の病気の仕組みを研究するとともに、脳に薬を届ける方法の開発、治療への応用を追究しています。また、日本人の死因のトップ“がん”の克服も重要な研究です。最新分析技術開発を通して、がんを早く見つける診断法の開発も行うなど、1人でも多くの患者様に役立つ治療の確立を目指しています。 小学生のころ、自宅で顕微鏡をいじり、実験の面白さを知りました。ラサール中学・高校では、寮生活で鍛えられながら、プログラミングを習得。東京大学理科II類・薬学部、同大学大学院薬学系研究科へと進み、実験に励みました。院生時代、夏はドライブ、冬はスキーを楽しみました。 自己紹介薬を脳に届ける方法を開発しがん早期診断・治療へ最新の感染症情報を交えた講義研究をもっと面白く、楽しく 私は、微生物学・感染症学の授業を担当しています。暗記科目となりがちですが、学生には授業内容と自分の接点を理解し、興味を持ち続けてもらえるように、メディアで取り上げられた感染症などの最新の話題も随時取り入れています。 さらに、学生とは研究の議論を行い、物事を論理的に考えられる能力、プレゼンテーション能力の習得・向上を目指しています。私自身が楽しむことで、学生にも研究の面白さや醍醐味が伝わるように心がけています。薬学部は薬を中心に多くの分野を学びます。勉強すべき科目がたくさんあり大変ですが、将来の選択の幅が広がります。小さい学部ですので、アットホームな雰囲気、学生間や教師との距離が近いのも魅力です。実験や講義を通して、個性を認め合い、お互いの長所を伸ばす雰囲気があります。ぜひ、ともに研究を楽しみましょう。 生化学・バイオテクノロジー科目を受け持っています。食べ物の成分や病気の話、環境問題のほか、それに関わるビジネスの世界とも結び付けながら、生命現象の基本を理解してもらい、その知識を社会活動へ展開できるような講義を行っています。工学部では、きっと皆さんの興味とつながる分野があります。ぜひ、一緒に学び、研究し、新しい未来を創りませんか。  農薬に興味があったものの、鹿児島大学理学部化学科、九州大学大学院理学研究科へと進学。遺伝子組み換え・放射性物質を使った生物学的研究等を行いました。長崎大学工学部応用化学科の助手になり、人と社会のためを考える工学研究の進め方を知りました。九州大学大学院工学研究院助教授を経て、熊本大学教授に。自己紹介食物成分、病気、環境問題 ―新しい未来を拓く知識さまざまな学問を横断する理解力と論理的思考を育む講義と研究 講義では、単なる知識の詰め込みにならないように、さまざまな事柄との関連に重きを置いて説明するように心がけています。例えば、太陽は光を発し、その光エネルギーを使って植物はデンプンを作り、デンプンは動物のエネルギーとなり、そのコントロールがおかしくなると糖尿病のような病気になります。また、その機構が分かれば、薬が開発され、市場に出ていきます。これらがどのように行われているのか、物理学・化学・生物学・医学・薬学・工学を横断するような総合的な理解ができるようになってほしいと思います。 研究室においては、目標に対して実験を組み立て、データを集め、どのように証明するのかをできる限り学生に考えてもらっています。将来、社会に出たとき、常に論理的な思考ができる人間になってほしいですね。日本の研究グループでは3例目。伊藤慎悟准教授らと。2020年米国薬剤師会(APhA)エバート賞(Ebert Prize)を受賞再生医療の材料として期待される絹糸のシルクフィプロテイン。SDGsに沿った開発を目指しています。養蚕から医療機器製造まで一貫体制体内で徐々に吸収されるマグネシウム合金を外科領域の医療機器に。抜去がいらず、患者のQOLを守ります。マグネシウム合金を用いた医療機器開発薬学部トピックただ今 研究開発中受賞歴平成16年度日本薬学会奨励賞 2004年東京テクノフォーラム21平成19年度ゴールドメダル賞 2007年The 2008 Asian PacicNew Investigator Award, ISSX 2008年インテリジェントコスモス奨励賞 2008年受賞歴アメリカ化学会出版賞、2017年9月Journal of Controlled Releaseトップ10審査員賞、2014年11月Journal of Controlled Release最多引用論文賞、2008年11月日本ペプチド学会奨励賞、2001年10月薬学部のみのキャンパスで、福利厚生施設も充実、交通の便もよい立地です。独立したキャンパス所  属:大学院生命科学研究部【薬学系】(薬学部)教授研究テーマ:血液脳関門、がん診断、質量分析大槻 純男 先生SUMIOOHTSUKI最新分析技術を駆使し、脳の病気の研究、脳に薬を届ける方法、見つけにくいがんの早期発見・診断法の開発ほか。所  属:大学院先端科学研究部【工学系】(工学部材料・応用化学科)教授研究テーマ:1)ナノ粒子を使った薬物送達システムの開発2)シルクタンパク質の医療材料としての応用3)マグネシウム合金を素材とした生体吸収性  医療機器の開発新留 琢郎 先生TAKURONIIDOME薬学部は41ページから工学部は46ページからKUMADAI Teacher’s File名物先生熊大のKumamoto University 20229

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