1古出文学科 日本語日本文学コース(日本語日本文学)日高 愛子 准教授和歌文学研究文学科研究テーマコミュニケーション情報学科コミュニケーション情報学科 現代文化資源学コース池川 佳宏 准教授マンガの単行本や雑誌のアーカイブ研究テーマ5354の人々は何を思い、言葉を紡いできたのでしょうか。私たちは日々、言葉によって思考し、言葉によって表現しています。紀貫之が『古今和歌集』仮名序の冒頭で「やまとうたは、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける」と謳っているように、和歌はたった三十一文字で、私たちの心の機微を巧みに表現し、無限に広がる世界を見せてくれます。人々は戦乱の世にあっても和歌によって自然を愛で、人の世を詠み、神仏に祈りや願いを捧げてきました。また、幕末の動乱のなかでも公家たちは古から連綿と継承されてきた「敷島の道」(和歌の道)を後世に繋げようと直向きに生きてきました。いったい、和歌を詠むという営為にはどのような意味があるのでしょうか。私はこれまで飛鳥井家という歌道家に注目し、室町期から幕末に至るまでの公家の歌学について研究してきました。彼らの和歌を紐解くことで、彼らが和歌を通してどのような人々と交流し、何を思い、それぞれの時代をどのように生きたか、ということが見えてきます。そして、そこには普遍的な人間の姿があります。和歌を通して、古を知る。そのことが、ひいては今を知り、未来を考えることにもつながると思うのです。近年は九州歌壇について研究しています。歴史のなかに眠る地方の人々の文事とその人生を明らかにし、地域の文化財を守るとともに、三十一文字に綴られた人々の思いを後世に伝えていきたいと思っています。版社で編集者としてキャリアをスタートさせたあと、文化庁の事業で「日本のマンガがどこに何がいくつあるか」を調べて公開するという無茶な仕事をしました。国立国会図書館の地下書庫に5年籠ったり、日本各地のマンガ所蔵館を訪ねたり、マンガの所蔵管理データベースシステムを1から設計したり。そしてマンガのアーカイブというのは図書館資料であり、博物館資料であり、文学館資料であり、デジタル資料であり、、膨大にあるマンガを、どう見取り図をつくり収集管理していくか、あまりの物量に現在進行形で難題が山積みで、必死にもがきつつも実務家としてミッションをこなしてきました。そんなことを経験していると、いつのまにか「誰も見たことがない景色」に出くわすことがあります。その風景を伝えよう、と論文を書いたり発表したりトークライブをしたり。そうこうしているうちに大学という森に迷い込んだというのが正直なところですね。 私は特に「雑誌」文化について興味があります。1冊の雑誌はその時代を映すパッケージであり、また幕の内弁当のようにさまざまな栄養を受け手に与えます。そして刊行を重ねるうち、作り手と受け手の相互作用で雑誌は大きな河となりうねりを生み出します。その一方で、細かな支流は多様な生命をはぐくみ、肥沃な土壌をつくっていきます。このように豊かな「雑誌」文化について、どう全体像を明らかにしていくか、どう保存していくか。ずっとそんなことばかり考えています。三十一文字の心を未来につなぐ豊かな雑誌文化の調査と保存
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