熊本大学 文学部 CAMPUS GUIDE 2024
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地域連携文学部内の各研究室は、「地域」の課題解決を目指し、研究成果を生涯学習の場に還元することに熱心です。特に、2016年4月に起こった熊本地震以降は、専門的知識を活かして、被災地の復興・復旧に積極的に取り組む研究室が増えています。Community5556 近年、全国的にもマンガやアニメを活用したまちづくりや地域おこしの取り組みが盛んですが、熊本では官民挙げて「マンガ県くまもと」を目指す動きがあることを皆さんご存じでしょうか。 たとえば2016年の熊本地震を受けた『ONE PIECE 熊本復興プロジェクト』の一環として、県庁前のルフィ像をはじめ県内各地に設置されている麦わらの一味の銅像を実際に見に行ったという人もいるかも知れません。これらは第一に地震で傷ついた地元熊本のために何かしたいという尾田栄一郎先生の熱意の賜物なのですが、尾田先生と集英社の協力の下で県のプロジェクトとして実施されているものでもあります。プロジェクトのウェブページを一番下までスクロールしていくと、「熊本県観光戦略部 観光交流政策課」という担当部署がわかります。観光交流政策課コンテンツ(マンガ・アニメ)班ではこのほかにも『夏目友人帳』とコラボした人吉・球磨PR動画(YouTubeで公開中)なども担当されています。 このように県が積極的に取り組んでいるだけでなく、自治体のマンガ施設としては老舗の「湯前まんが美術館(那須良介記念館)」(1992年開館)や2017年にできた「合志マンガミュージアム」など、実は熊本では地域に根差した地道な蓄積があります。加えて、尾田栄一郎や井上雄彦など県出身あるいはゆかりの有名マンガ家もかなり多く「マンガ県」を名乗る資格は十分ありそうです。 そうした機運の高まりを受け、熊本日日新聞社や熊本大学の呼びかけの下で県内の企業や自治体などが参加する「くまもとマンガ協議会」が発足しました。これまでバラバラに行われてきたマンガを使った町おこしの取り組み同士がより強いつながりを持ち、産官学連携のオール熊本体制で「マンガ県くまもと」を具体化していくため、熊本大学では文学部コミュニケーション情報学科の現代文化資源学コースの教員が関わっています。2022年からは熊本日日新聞社主催「熊日マンガ文化賞」が創設され、熊本大学も選考に協力しました。 マンガを地域振興や観光振興に役立つ文化資源と捉えた場合、有名な作品とのコラボイベントを企画するとか記念館や美術館などの建物を作るとかいった一見わかりやすい施策には、ちょっと落とし穴があります。現在人気の作品もその人気が永続的に高くあり続けることは困難です。またイベントはあくまで一時的なものであって、恒常的な生産や消費につながる訳ではないので、本当の意味で地域を活性化する力はそれほど大きいとはいえません。施設は建設にも維持にもコストがかかりますが、ただそこにあるというだけでは人を呼べません。魅力的な企画展やマンガ文化そのものについての教育普及を継続的に発信することが必要です。これらの活動を支える専門人材を育て、多くの人が価値や魅力を感じられるようにする長期的な基盤づくりこそが大学に求められる役割だと考えます。産官学連携で「マンガ県くまもと」を具体化地域社会の課題解決への挑戦学部と地域が連携して社会貢献活動を実施研究や授業を活かして、「地域社会の課題解決への貢献」や「大学の生涯学習機能の強化」をテーマに、地域連携活動を展開しています。

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