球面とトーラス(一人乗りの浮き袋)という微分方程式の解で表されます。また波の伝わり方はという微分方程式,熱の伝わり方はという微分方程式に支配されます。 このような微分方程式の解は具体的に求められるだろうか、 というところから近代の解析学がスタートしました。そのうちに、微分方程式の解は普通は具体的に表すことができない難しい関数になる、ということがわかってきました。そこで解析学のテーマは、微分方程式の解を具体的に求めるというものから、 具体的には表せない解がどのような振る舞いをするのかをできる限り記述する、という問題に移りました。 解析学は様々なアイデアや概念を発見して、 そのような問題に取り組む学問です。 その成果は、 星の運行・大気の流れといったような大きなスケールの現象や、 素粒子物理学のような極小のスケールの現象、液体の水が固体の氷になるといった相転移現象、あるいは細菌の増殖の仕方など、 ほとんどあらゆる自然現象の解明に結びつきます。さらには整数を並べたときに素数が現れる頻度というように、数学的現象の解明にも解析学は活躍します。連続変形で不変な性質に着目する解析学 人類は自然の中の存在であり、 自然の脅威と恩恵の下で生き続けています。そして人類は知性によって、自然の動きをあらかじめ予測しようと努めてきました。そのための一つの手段は経験を積み重ねて教訓を導くことですが、もう一つ、自然がどのような仕組みで動くのか、 そのからくりを見出そうという営みも続けてきました。そのためには、 自然の本質は変化ですから、 変化をつかまえて記述することが必須です。変化を記述することが可能になったのは、 人類が4000年前にそのような営みを始めたのからすると、 ごく最近の17世紀(400年前)になってからです。ニュートンとライプニッツが「微分」 を発見したのです。微分は変化を表す量で、単に速いとか遅いとかではなく、どれくらい速いかという変化の様子を定量的に(つまり数値として)表すことができます。さらにニュートンは微分を用いて、 万物の運動を支配する 「運動法則」を発見しました。これによって、 自然の動きは運動方程式と呼ばれる微分方程式を解けばわかる、ということになりました。たとえば太陽の周りを回る惑星の運行は、表現論 平面ベクトルや空間ベクトルには和とスカラー倍という演算があります。ところで、平面・空間ベクトル以外にも、和とスカラー倍を考えられるものはたくさんあります。現代数学ではこのようなものもベクトルとみなすことがあります。例えば、多項式は多項式同士の和と定数倍ができますので、ベクトルとみなすことが出来ます。そうすることで、ベクトルの回転など、色々な便利な変換が適用できるようになるのです。さらに、多項式のような対象の集まりをベクトルの集まりとみなすことで、対象間のある種の変換の集まりを、座標軸を用いて一斉に「数の表」として表せるようになります。これを「表現」といいます。表現の性質を調べるのが表現論です。特に、ありうる表現を分類したりします。物理学の量子場理論など、数学以外の分野でも広く応用されています。位相幾何学 正四面体の頂点の数a、辺の数b、面の数cはそれぞれ4、6、4です。従ってa-b+c =4− 6+4=2がわかります。正四面体の代わりに正八面体や正二十面体で同じことを考えてみると、 やはりa-b+c =2がわかります。このように必ず2という数が現れるのは、以上の正多面体の表面は球面を連続変形して得られるからです。それでは幾つかの三角形を組み合わせて一人乗りの浮き袋のような形を作ってみましょう。そのとき、a-b+c はいくつになるでしょう。これは2にはならず、 球面を連続変形によって一人乗りの浮き袋にはできないことの数学的な根拠を与えます。以上のことはEuler-Poincaréの公式とよばれる一般の結果からわかります。位相幾何学は、 図形或いは空間の連続変形で不変な性質や 連続変形でうつり合わないものの分類について調べる分野です。位相幾何学の基本問題を提示していたPoincaré 予想は、 3次元の閉じた空間に関するもので、21世紀に入り解決されました。組合せ論 数学の原初形態は「モノを数える」ということでしょう。リンゴが三つといった素朴な「集まり」の抽象化として「集合」の概念が生まれ、 個数を加えるなどの「演算」を付与することで「群論」などの代数学に成長しました。 つまり数え上げの数学である組合せ論は代数学の源泉と言ってもいいでしょう。何かの個数を勘定する、 という作業が実は数学の深遠な部分に触れているのだ、という体験を一度でもすればもうあなたは数学の虜になること間違いありません。
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