熊本大学 理学部 2024
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熊本市内で採取した、黄砂や汚染物質を含むPMの電子顕微鏡写真梅雨期(6月)の降水分布と水蒸気の流れ誘導結合プラズマ質量分析計(ICPMS) を用いた水の分析風景ジルコンの年輪のような成長構造(電子顕微鏡写真) 海底火山活動や熱水鉱床の証拠を探してドレッジ調査(トカラ列島横当島沖合)現生介形虫の電子顕微鏡画像。上は右殻の側面観、下は右殻を取り除いたもの。着色部は軟体部を示す大気環境学 大気中には、粒子状物質(PM)と呼ばれる、目には見えないほどの固体や液体の粒が浮遊しています。最近では特に、 中国大陸から飛来する黄砂や汚染物質が話題になっていますが、このようなPMは、呼吸器への影響や酸性雨といった地域的な大気汚染ばかりでなく、 全地球的な地球温暖化の問題にもかかわっています。熊本でPM濃度の観測を行い、採取したPM試料を分析することで、大陸起源のPMの拡散や、それが人間社会や自然環境に与える影響を調べています。地球気候システム学 地球の温暖化にともない気温のみならず降水特性も変化しつつあるのではないか、 との懸念が広がっています。降水特性の変化を明らかにするためには、 大規模な大気循環(下図参照)、 そしてこれを環境とするより小さなスケールの降水システムの変化を総合的に明らかにする必要があります。人工衛星データなどの様々なデータを解析し、 降水をはじめとする日本の気候そして世界の気候の変化を調べています。同位体水文学 地球上の水循環に関わるプロセスを物理的・化学的に究明する研究を行っています。水と接触する固体や、 水に溶存する元素の放射性・安定同位体を測定し、 降水・河川水・地下水や土壌水の目に見えない循環や流動プロセスを解明しています。岩石や鉱物によって解明する地殻の発達・進化 岩石や鉱物を研究する意味とは何でしょうか。岩石や鉱物には美しく、集めるだけで楽しいものもあります。しかし、岩石や鉱物にはそれ以上の役割があります。それは地球の歴史のレコーダーの役割です。地球(地殻)の発達・進化を記録しています。顕微鏡観察や化学分析、年代測定を通して岩石や鉱物から情報を抽出し、それらをもとに地殻の発達・進化の復元が可能です。沿岸環境解析学 主に介形虫(微小な節足動物の一種)を用いた、現・古環境学的な研究をおこなっています。介形虫の生物学的特性を利用して、過去から現在までに沿岸域でおこった様々なイベントの解析に取り組んでいます。さらに当該分類群の環境指標種の認定や、日本列島の古生代から現在までの沿岸域の(古)地理の復元にもチャレンジしています。海洋火山学 地表の約7割を占める海底は、概ね火山活動によって直接作り出されています。暗闇に閉ざされた広大な深海底は、 20世紀前半まで前人未到領域でした。近年の技術革新は、 そんな深海底に科学のメスを入れ、謎を少しずつ解き明かしています。海洋火山学は、 海洋と深海底火山との関わりあいをよりよく理解するための研究分野です。

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