微分幾何学代数幾何学確率論群論力学系空間の曲がり具合いを見る自然科学は不規則性の解明にあリ(ニュートン)力学を学びます。このような一定の法則に従うもの 足し算、掛け算、写像の合成など、演算というといろいろありますが、 一つの演算だけに注目してその演算で閉じた集合を考えてみましょう。その集合と演算にいくつかの簡単な条件を付けたものが群です。 群を用いて具体的な図形や立体、もう少し一般に数学的な対象の対称性を記述することができます。群の性質そのものの研究や群で記述される対称性を調べる研究などがあります。 高校の物理の授業で、物体は運動の法則に従って動くというの動きを研究する分野のことを力学系といいます。例えば、漸化式で与えられる数列も、一定の規則によって作られる点列ですから、その振る舞いは力学系の研究対象になります。ここでは、具体的な漸化式 から作られる数列(点列) を考えてみることにしましょう。2次関数で定義された比較的単純な漸化式であっても、数列 の振る舞いは大変複雑です。しかも定数 、初期値 をほんの少しでも変えると全く異なる挙動を示すことも不思議で興味深い現象です。図1は、 のときにパソコンで数列を描かせた図です。折れ線と対角線 との交点達が数列 に対応しており、 が区間[0,1]の中で「乱雑に」動き回るカオス状態であることがわかります。また図2は、横軸に 、縦軸を の値が密集する場所(集積点)を描いたものです。 を0から4まで増加させたときに、集積点が複雑に変化していく様子が見て取れます。漸化式のように高校で扱う数学でも、性質が分かっていないことがあり、最先端の研究につながっています。 よく知られているユークリッド幾何は 2000 年以上前に形作られました。ごく当たり前と思われる5つの公準に基づいて、私たちが中学校の数学で出会っただろう図形に関する結果が体系的に解説されています。19世紀に入リ、ユークリッド幾何の5つ目の公準である平行線の公準を否定することで、双曲幾何という別の世界が構築されることがわかりました。曲面論に基づいて発生したリーマン幾何はユークリッド幾何、双曲幾何を含む多種多様な空間の幾何の構築を可能にし、 その後の空間概念や幾何学思想に大きな影響を及ぼしました。 微分幾何学はリーマン幾何をはじめとする様々な幾何を研究する分野です。 3直線が一点で交わる、という平面幾何の問題があるとします。純粋に図形的に考えてもよいですが、 座標によるアプローチもあります。すなわち、平面に座標を入れ、 直線を方程式で表し、 方程式を解くことにより交点の座標を計算するという方法です。 「方程式を解く」 という代数的な考察により、「3直線が一点で交わる」 という幾何的な性質が分かるわけです。代数幾何学はこのように、 代数的な手法で図形を考察する分野です。直線や曲線だけでなく、曲面やさらに次元の高い図形も研究します。 確率論は、ランダムな試行や現象における事象の起こりやすさを「確率」と呼ばれる数で表現し、ランダム性の中に潜む普遍的な性質を研究する数学分野です。確率論では主に、試行や現象における状態が時間とともにランダムに変化していく確率過程と呼ばれるものを研究の対象にします。確率過程の重要な例としては、水面で不規則な動きをする微粒子をモデル化したブラウン運動 ( ウィーナー過程 ) が挙げられます。確率過程を調べるために確率解析など多くの理論が開発され、確率論独自の数学の研究が行われています。一方で、自然科学 ( 物理、化学、生物学など )、工学 ( 制御工学など )、社会科学 ( 経済学など ) に現れる具体的な現象や問題と深く関わりを持ちながら発展しているのが確率論の特徴です。球面、平面及び双曲平面(円板モデル)における直線(測地線)図1図2数学コース 研究の紹介
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