熊本大学 理学部 2026
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有機エレクトロニクスを指向した物質開発と物性発現機構解明結晶内で分子を動かす有機分子の構造多様性を活用した新しい電子機能性物質の開発多機能性金属錯体の可能性 20世紀半ばまでは絶縁体として考えられて来た分子性化合物を用いて、現在では金属・超伝導状態を示す物質が数多く創造される一方、半導体材料としても身近な素子に利用されるようになり、今後のエレクトロニクスの主役は分子性化合物が担うと言われています。分子自身の持つ光学的・磁気的性質にも注目しつつ、分子設計に立脚した新しい有機エレクトロニクス材料の開発とその物性発現機構解明を行っています。 液体・気体・固体の状態にかかわらず、身の回りの物質を構成する分子は目に見えないながらも、複雑に動き回っています。液晶テレビで使われる液晶分子のように、身の回りでは意図する方向に動く分子が活躍しています。新しい物質開発から、固体内で分子の動きを制御する設計指針を理解し、次世代の材料開発に結びつく知見を開拓しています。 有機分子は、炭素を中心とする数種類の元素から成り立っていますが、原子の種類や個数、結合の仕方を工夫することで多種多様な構造の分子を合成することができます。このような分子を独自の方法で集合化(結晶化)させることで、これまでにない新しい電子機能性を有する有機物質の開発を行っています。スイッチング金属錯体:熱、圧力、光、磁場あるいは電場などで金属錯体の状態変化を誘起することで、スイッチングやメモリ、新・二次元材料-酸化グラフェン・金属酸化物ナノシートの開発:グラファイトやマイカ(雲母)などに代表される層状物質を、特殊な化学反応によって1層ごとに剥離させ、新しいナノ材 金属錯体は金属イオンと有機配位子からなる分子性物質です。金属イオンの電子状態や有機配位子の構造・性質を利用して分子をデザインすることで、これまでにない新しい性質を示す多機能性金属錯体を開発することができます。トランジスタなどを志向した分子デバイスの開発は、重要な役割を果たします。さらにアルキル長鎖などを金属錯体に付与することで、液晶性やゲル化などソフトマテリアルに展開できます。料(ナノシート)の開発を行っています。ナノシートは、分子レベルの薄さを持つため、バルクとは異なる機能性を示す可能性があります。酸化グラフェンや金属酸化物からなるナノシート材料のもつ電気的性質やプロトン伝導性、触媒機能を明らかにし、科学発展に貢献し社会に役立つ物質開拓を行っています。巨大な磁気抵抗効果を示す分子結晶結晶中のカチオン分子が示す分子面内回転水素結合を活用した新しいタイプの電気伝導性スイッチング結晶物理化学分野無機化学分野化学コース 研究の紹介

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