高知工科大学 KUT WAY 2025
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08KUT WAY 2025 また、炭素膜の下に低密度なCNTフォレストが自己組織的に形成される構造に着目し、構造の厚さを制御することに成功。この構造がもつ優れた光学特性を初めて見出し、霜柱のような構造から「霜柱状CNTフォレスト」と名付けた。さらに、炭素膜に周期的な穴の開いたフィッシュネット形状に加工した霜柱状CNTフォレストは、加工のない構造に比べて赤外光に対する吸収が増加することも明らかにし、メタマテリアルの特性を引き出した。「CNTフォレストをメタマテリアルに応用したCNTフォレストメタマテリアルは、これまでにない物性を回路設計によってつくり出せるエキサイティングな融合分野です。特定の波長だけを吸収して利用する環境負荷の少ないシステムの構築が可能になるだけでなく、耐熱性が高いというCNTの利点を生かし、融点の低い金属のメタマテリアルでは困難だった太陽エネルギーを有効利用するシステムへの応用が期待されています」CNTフォレストメタマテリアルの大面積化で新たなエネルギーデバイスの可能性 CNTフォレストメタマテリアルをエネルギーデバイスへ応用するためには、大面積化が必要になる。大面積化が技術的に困難なFIB加工を用いる手法の代替手段として、古田教授らはドライエッチング法を用いることで、CNTフォレストを自己組織的に組み上げる新たな手法を開発。その大面積化が原理的に可能な手法で作製したCNTフォレストにおいて、メタマテリアルの特性である特定の波長の吸収・反射を制御できることも明らかにした。 さらに、これらの成果を応用につなげようと、CNTを用いて高効率な太陽熱温水器の開発にも取り組んでいる。これまでに光吸収剤に市販の材料とCNTを用いCutting EdgeKEYWORDプラズマスパッタリング装置→カーボンナノチューブの種である触媒超微粒子を堆積している1Cutting Edge最先端研究 02システム工学群先進エネルギーナノ材料研究室古田 寛 教授【専門分野】 薄膜工学、ナノ材料、電子物性、応用光学・量子光工学、エネルギーデバイス(変換・蓄エネ)、メタマテリアルた場合の温度上昇を比較し、CNTの方が温度上昇しやすいことを見出すなど、性能向上に向けた検討を進めている。 古田教授がこのような研究開発を通して実現したいのは、ナノマテリアルで地球のエネルギー問題を解決すること。特に地方や発展途上国でエネルギー問題の解決につながるような低環境負荷かつ低コストなエネルギーデバイス開発をめざしている。「日本では、エネルギー供給体制を大規模集中型から再生可能エネルギーを活用した自律分散型へと移行しようとする動きがあります。特に山間部に集落が分散する高知県は、自律分散型へのニーズが高い。個人が管理できる小規模なエネルギーデバイス開発を高知で実現することが目標です」メタマテリアルメタマテリアルとは、自然界には存在しない電磁気学的特性をもつ人工物質で、人工的に設計された微小な構造体(単位素子)を組み合わせて作られます。単位素子の形状や配置を変えることで、電磁波の反射や屈折などの特性を自由に制御することができます。従来の物質では実現できなかった革新的な機能により、通信分野をはじめとして様々な分野での応用が期待されています。ナノスケールの回路設計によって光の新たな性質を引き出す メタマテリアルは、原子・分子より大きく、電磁波より小さいスケールで回路設計された電極などの人工構造体で、通常の物質では実現不可能な物性や機能を発現する。そんなメタマテリアルの構成材料として有望視されているのが、電気・光特性に優れたCNTだ。CNTは、基板上に堆積させた触媒の微粒子に原料ガスを供給することで、植物のように成長させることができる。このように「自己組織化された成長プロセス」をもつCNTは、メタマテリアルに不可欠な微細かつ複雑な構造体を簡易に作製できる可能性を秘めているのだ。 自然界に目を向けると、自己組織的なパターン形成は至るところで確認できる。カタツムリの殻表面にある高度な洗浄機能やトカゲの足指に生えた剛毛の粘着機能などはその一例であり、多くの生物には自己組織化によって構築されたナノテクノロジーが実装されている。古田教授はこうした自然界の自己組織化現象に倣い、CNTを用いて様々なナノ構造体を作製し、メタマテリアルとなり得る特異な機能性を見出してきた。 基板に対して垂直方向に向きを■えて並ぶ高密度のCNTは、森のように見えることから「CNTフォレスト」と呼ばれ、あらゆる波長の光を高感度に吸収できる「最も黒い材料」として注目されている。古田教授らは、CNTフォレストでメタマテリアルを作製しようと、触媒の微粒子配列をメタマテリアル形状に成形する技術を開発。この技術を利用して作製したCNTフォレストの物性を評価した結果、回路中の共鳴現象によって赤外光に対する反射強度が減少し、メタマテリアルの性能を示すことが明らかになった。これはCNTでメタマテリアルを作製した世界初の成果として、著名な論文誌に掲載され高い評価を得た。カーボンナノチューブ(CNT)による新たなメタマテリアルの創出Chapterナノ材料による高効率エネルギーデバイスを実現し、地域や世界の諸問題を解決に導く

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