教育学部開いてみよう学問の扉 少子高齢化の進展、地球温暖化問題、世界情勢の緊迫化、そして新型コロナウイルス感染症の世界的大流行など、今、私たちはかつてないほど困難な問題に直面しています。それらの課題解決に科学技術が果敢に挑戦し、未来社会の展望を切り拓いていくことが求められていますが、そのためには、あらゆる分野の知見を総合的に活用して諸課題に向き合うことが不可欠です。本研究科は、人間の思想や歴史、生き方や行動、文化などを追求する人文科学、社会の仕組みや動きを解明する社会科学、人間の身体や脳、心に関する人間科学などの多様なアプローチから「人間とは何か」という基本的命題を探究し、現代社会の諸問題を解決しうる知の創出を目指しています。その基本となる活動は、「理論とフィールド(場)との往還」です。基礎研究の成果を場にフィードバックし、さらにその結果を基礎研究により検証するループを繰り返します。こうした過程を通じて、一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会を築くトップリーダーを育成します。■進学 例年3割ほどの学生が本学「教育学研究科」などの大学院に進学します。中学校や高校の教職に就く学生も少なくありませんが、文部科学省や法務省をはじめとする官公庁の他、マスコミや出版、金融・保険や各種メーカー、サービス業など、就職先は多岐にわたります。■就職先の例 楽天グループ㈱/アビームコンサルティング㈱/P&Gジャパン(同)/東京海上日動火災保険㈱/文部科学省/㈱バンダイナムコスタジオ/大阪ガス㈱/神戸少年鑑別所/茨城県庁/㈱リクルートホールディングス/関西電力㈱/チームラボエンジニアリング㈱/西日本電信電話㈱/アクセンチュア㈱/㈱ベネッセコーポレーション/パーソルキャリア㈱/伊藤忠商事㈱/三井物産㈱/ボストン・コンサルティング・グループ(同)/住友林業㈱/総務省/㈱TBS/衆議院法制局/㈱テレビ東京/三菱地所㈱■取得可能な資格 【公認心理師試験の受験資格】 公認心理師法に定める公認心理師の資格を得るためには、国が実施する公認心理師試験に合格する必要がありますが、本学部・研究科の修学期間内に、同試験への受験資格を得るために必要な科目を履修することができます。具体的には、文部科学省令・厚生労働省令に定められている科目を、大学(学部)及び大学院(研究科)においてそれぞれ履修し必要単位を修得する等により、受験資格を得ることができます。■取得可能な教育職員免許の種類と教科中学校一種……社会高等学校一種……地理歴史/公民特別支援学校教諭一種…… 聴覚障害者・知的障害者・ 2023年度卒業生の状況進学35.3%肢体不自由者その他4.4%就職60.3%教育学部/大学院教育学研究科畑中 千紘 准教授(金沢大学附属高等学校出身)在校生藤田 皓太郎さん広島県 修道高等学校 出身京都大学教育学部教育科学科相関教育システム論系3回生京都大学の魅力小規模な学部だからこそなしえる研究・学生生活の充実先輩が教える教育学部には1学年約60人という小規模であることを活かした唯一無二の魅力があります。授業ではアカデミアの最前線で活躍される先生方から少人数のゼミで指導を受けることができます。授業外では小規模ゆえに各学年内や先輩・後輩との繋がりが深く、学生同士の勉強会等も多く開催されています。11月祭(NF)と同時期には教育学部祭として全4学年からの有志で企画をしています。学生のまち京都の唯一無二の教育学部でお待ちしております。大学院の紹介教育学研究科が担う人材育成卒業後の進路25大学院教育学研究科目に見えない「心」と向き合う臨床心理。人びとの心の変化が示唆する、現代社会の様相を捉える 「心理」という言葉はネットやTVなどを通じて巷に溢れる一方で、学問として蓄積されてきた心理学の知見を社会に活用するという動きはまだまだ発展途上です。たとえば、「いますぐに」自動運転がすべての車に実装されたら、安心して受け入れられるでしょうか。おそらく不安に思う人が多いはず。新しい制度やルール、技術を導入するとき、それが人の心に沿うものかどうかという視点は、見落とされがちですが非常に重要です。 心理学の名を冠する学問領域のなかでも、私の専門は臨床心理学です。臨床心理士として、悩みを抱えたクライエントと向き合うことに並行して、現代社会に生きる人びとの心を見つめながら、心の悩みから浮かび上がる現代社会の課題を追究しています。教育学部では、臨床心理学だけでなく、人間が世界をどう認識しているのかを探る認知心理学もしっかりと学びます。人間の心とはどういうものなのか、普遍的な心の側面を知ることは、個人の心の傾向をつかむことと両輪になっています。 目に見えない「心理」をつかむことは容易ではありませんが、クライエントと向き合う過程で、心の変化を感じる瞬間に出会います。子どもを対象に、ともに遊ぶことを通して自分を表現することを促す、プレイセラピーという心理療法があります。教育学部でも長年取り組んできた方法ですが、一時期、発達障害に対して「効果がない」と考える立場が優勢となりました。しかし、現場ではセラピーを通して子どもたちが変化する実感が確かにあります。そこで頼りになるのが客観的な数値データ。セラピー開始前と、半年間のセラピー実施後の心理検査を比べてみると、明らかな発達指数の上昇が見られました。訓練や教育はしていなくても自由な遊びの中で子どもの発達が促進されていたのです。日々を過ごすなかで私たちはなんとなく自分や社会が変わっていくことを感じています。しかしその変化を捉えるのは簡単ではありません。臨床を通して感じられる些細な実感や疑問がその変化を捉える鍵となります。調査や実験は現代社会と人の心に起こっていることの一面を私たちに見せてくれる、それが研究のおもしろさです。 私が学生時代、京大に感じたのは、個性豊かな人たちと付き合い、多様な価値観に触れるなかで自分の存在が解放されるという感覚。新しい自分を見いだす中で心理学に興味を持った方は、歴史ある京大臨床心理学の世界に飛び込んでください。
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