医学部開いてみよう学問の扉 京大医学部の特徴は、高い専門性を備えたあらゆる分野のスペシャリストが集うこと。そして、その誰もが、対話のチャンネルを広く開いていることです。医学の進歩はめざましく、私の大学時代と比べるといまの医学生に必要な知識量は格段に増えました。そのため、全領域の知識を身につけることはむずかしく、どうしても自分の専門領域を深めることに集中しがちになります。でも、それだけでは新しい発見は生まれません。違う専門領域や、異なる立場の人たちとの対話から得る着想こそが、新領域への扉を開きます。京大医学部には最先端の医療と知識、技術が集います。これは新しいことに貪欲で、恐れず挑戦する人がいてこそできること。「京大らしさ」に形はありません。一人ひとりが抱く「京大の姿」を実現すべく、挑戦して、努力する気概こそが、「京大らしい」活発で挑戦的な空気を生み出しているのです。 私の主宰する消化管外科学教室は、国内でいち早くロボット支援手術を導入しました。開腹手術よりもキズが小さく済み、手ぶれがないので緻密で繊細な操作が可能です。近年は、術中の手技の動画や、鉗子の操作時間などの術中のさまざまなデータを分析して活用する動きもさかんです。いかに患者さんの体への負担を減らし、安全で精緻な手術ができるか。新しい技術を積極的に取り入れて、着実に歩みを進めています。 外科医に必要なことは手先の器用さではありません。なによりのポテンシャルになるのは、体の仕組みや医学への素直な興味。人を見つめる学問を「おもしろい」と思うかどうかです。これは、ほかの診療科や基礎医学の分野を志す場合でも同じ。興味は努力する意欲につながり、努力ができればおのずと技術も身についてきます。 医師は人を相手にする仕事。患者さんはもちろん、外科医一人で手術を完結させることはできません。手術に携わる専門家全員が力を発揮してこそ、安全で確実な医療が実現できます。そこで求められるのがリーダーシップ体験の豊富さと丁寧なコミュニケーション。これを特に学生時代には磨いてほしい。知識と技術に加え、人間力というピースがぴったりとはまったとき、ひと回りもふた回りも医師として成長することができるのです。 医療だけでなく、歴史や古典、社会学などにも興味があり、古都の文化に触れながら幅広い学びを得たいと思い京都大学を志望しました。専門に縛られず興味のある分野について様々な授業を受講し、並行して1回生から研究室に通いました。自分が親しんできた競技かるたをテーマに研究を進め、現在は札認識における脳内ネットワーク基盤の解明を目標としています。京都大学は自分から手を伸ばせばどんな学びも深められる場所です。ぜひこの学び舎で自分の世界を広げてください。 大学院医学研究科は、医学専攻、医科学専攻、社会健康医学系専攻、人間健康科学系専攻、京都大学・マギル大学ゲノム医学国際連携専攻の5専攻からなる、全国でも屈指の規模を誇る研究科です。中でも、医学科卒業生以外が医学を研究する医科学専攻は修業年限3年の博士後期課程を有する我が国で唯一の専攻です。医学研究科の研究領域は、基礎医学、臨床医学、社会医学、医療技術学、その他、医学・医療と人の健康と福祉にかかわるすべての領域を包含しています。本医学研究科の使命は、医学・医療にかかわる領域における「知の創造」とそのたえまない「実社会への還元」によって人類の健康と福祉の向上に貢献すること、および、その牽引力となる国際的なリーダーとなるべき人材の育成です。■概要 研究分野によっては大学院に進学する者もいますが、一般的には医師免許取得後、医学部附属病院あるいは研修病院において2年間の卒後臨床研修を行います。2023年度 卒業生の状況進学(大学院)4.6%■取得可能な資格 学科の所定課程を修了し、卒業した者および卒業見込み者には、厚生労働省が実施する医師国家試験の受験資格が与えられます。*医師国家試験合格者 103名 95.4%その他8.4%臨床研修医87.0%医学部医学科/大学院医学研究科小濵 和貴 教授(灘高等学校出身)在校生医学部 医学科 5回生京都大学の魅力田中 美羽さん東京都筑波大学附属高等学校 出身先輩が教える大学院の紹介医学・医療のすべてがここに。人類の未来を育む卒業後の進路41専門に縛られず、自分の興味を追究できる場所大学院医学研究科安心・安全な手術の実現は、挑戦からはじまる医学部に満ちる熱い気概。
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