Azusa Uji■■■■■■■■■■■■■■■■大学院の「国際政治経済分析」の授業風景ジュネーブで開催された「水銀に関する水俣条約」の締約国会議でマサチューセッツ工科大学の研究者と 国際政治経済分析は世界の諸問題において、政治、経済利益をめぐって国々が対立する様子や国々の協調を可能にする条件を、理論的・実証的に読み解いてゆく学問です。私の主な研究対象は、環境に関する国際条約。2013年に採択された「水銀に関する水俣条約」もその一つです。水銀の適正な管理と排出の削減を定めた条約で、会議の場には約140か国もの政府関係者が出席しました。各国の思惑が錯綜するなかで、どのように条約は成立していくのか、交渉に関わった方々へのインタビューを通して、国際交渉プロセスや国の政策決定過程などを分析し、明らかにしました。 理論をもとに仮説を立てて臨み、あらゆる可能性を考えているつもりでも、交渉や意思決定のプロセスは想定外の連続です。現場の人の動きや空気感、個人の意思決定の過程は、机上の理論だけではつかめません。さまざまな手法を駆使して、発見の手がかりを集めます。こうした一つひとつの問いの実証を積み重ね、新しい視点を得た先に思い描くのは、資本主義社会をもっとクリアに見通せないかということ。資本主義社会が内包する歪みや、歪みが引き起こす問題、その解決策に至るまで、理論的な見方を世の中に提示したいと考えています。 高校時代は、国連などの国際機関で働くことを志して京大法学部に進学しました。学部講義で出会った国際政治経済分析に魅了され、研究者の道を歩みはじめましたが、水俣条約の研究をきっかけに、現在は国際プラスチック条約の交渉の場に外務省の方とともに参加しています。研究の知見をもとに交渉戦略を考えたり、現場にある未整理の情報を学問的に整理して意義のある情報に変換したりと、憧れであった政策の現場で、研究者の立場だからこそできる関わり方を楽しんでいます。 幼少期から英語に触れる機会はありましたが、帰国子女でもなく、特別に国際的な家庭で育ったわけではありません。初めての海外での長期滞在経験も京大に入学してからでした。豊富な海外経験がなくても、大学入学後からの学びや活動次第で、国際的に活躍できるチャンスはいくらでもあります。京大の自由の学風は、そうした姿勢を後押ししてくれますし、留学制度や国際的カリキュラムも、近年、よりいっそう充実しています。今は受験勉強が大変だと思いますが、入学後は、自分が一生愛情を注ぎ続けたいものは何かを京大で見つけてください。うじ・あずさ金蘭千里高等学校出身。京都大学大学院法学研究科博士後期課程修了。京都大学大学院法学研究科講師などを経て、2021年から現職。5Interview 2■■■■■政治と経済の思惑飛び交う交渉の場。複雑な国際社会を理論で読み解く
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