学生時代の贅沢で濃密な時間の流れ上/学部生のころはサークルで三味線漬けの日々 右上/勤務先のマスコットキャラクター「はれるん」との1枚 右下/泊まり込みで研究生活を送った飛騨天文台。望遠鏡をパソコンで操作して太陽を追いかけ観測します町田亜希さん 気象庁 勤務お茶の水女子大学附属高等学校 出身2019年3月 理学研究科宇宙物理学専攻 修士課程修了稲垣恭子京都大学理事・副学長〈男女共同参画、渉外(基金・同窓会)担当〉特別座談会10がありました。稲垣 最後はどう決断しましたか。飯塚 私はいままでの研究内容をできるだけいかせる企業への就職を決めました。町田 これまでの研究内容をいかせる世界に進むべきか、分野は変わっても人の役にたてる仕事をするかと迷いました。この二つを並行して進めるなかで気象庁への採用が決まり、「ここでがんばれということだ」と心を決めました。若井 大学時代、工学部の友人で「人間みたいなAIをつくりたい!」と本気で考えている人がいました。いまでこそAIは身近な存在ですが、当時はそんなことが実現可能だなんて、思いもしませんでした。自分の常識では考えられないことを普通に話す、高校生までの私の世界にはいなかったタイプで、京大だからこそ出会えた人です。稲垣 京大は、人とは違う心意気を歓迎する大学です。学生どうしはもちろん、教員もおもしろがって背中を押す。自分の好きなことに熱中して、みずからの興味にしたがって一直線に邁進する人を見ることで受ける刺激は大きいですからね。飯塚 研究室に配属されると、専門分野の世界にこもりがちになります。そんなときは、サークルの友人など、ほかの研究室の人と話して視野を広げるように努めていました。若井 「変人」は、いまも昔も京大では褒め言葉ですね(笑)。私も、ほんとうにいろいろな人に出会いました。稲垣 自分のなかにも「変人」の部分はあります。「変人」とよばれるような人に出会うと、「自分を押し隠さなくてもいいんだ」と、自分のことも許容される感覚を覚えたものです。若井 どちらかというと控え目で慎重だった私が、いまでは周りの人から「思い切りがいいね」と言われることがありますが、もとを辿ると学生時代の影響が大きい気がします。 現在は、管理職として多様なバックグラウンドの人と働いていますが、自分とは違う人たちのことを認めたうえで、力をあわせて事業を進とがきっかけです。でも入学後、授業で見た太陽の写真の美しさに惹かれて、宇宙への興味が湧いてしまって。志を貫くべきか、ものすごく迷いましたが、「太陽に出会ったのもひとつの縁」と宇宙物理学に方向転換を決めました。稲垣 入学時に学びたいことを決めていても、出会いがもたらす影響は大きいのですね。飯塚さんはいかがですか。飯塚 もともと地球環境問題や太陽光発電などの研究に興味があって、工学部工業化学科(現・理工化学科)を選びました。入学してみると、扱うテーマは有機化学、無機化学、物理化学などと想像以上に幅広い。どこから手をつければよいのか、学部生時代はかなり悩みました。蓄電池などを取り扱う電気化学をテーマに決めてからは、的を絞って深く追究する研究スタイルが性にあっていたのか、楽しい研究生活でした。 ふたたび悩みが生まれたのは就職活動。工学系は専門分野をいかそうとすると、就職先の選択肢が限られてしまう。歩むべき道が定まるのはよいことでもあるのですが……。町田 私は理学系ですが、就職活動をするなかで同じような悩み
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