九州大学 法学部 2023
10/32

8講義紹介刑事訴訟法豊崎 七絵 先生Q. 刑事訴訟法とはどのような法律ですか、 刑法との違いも含めて教えてください。講義紹介国際私法・国際取引法 国際私法・国際取引法とは どんな法律ですか?Xが警察官に犯罪の嫌疑をかけられた、さらにXは検察官によって起訴されたといっても、その人が犯人であるとは決まっていません。近代以降の国家においては、「手続きなくして刑罰なし」という格言の通り、Aを裁判なしに犯人であると決めつけ、処罰することはできません。国家の持つ権力の中でも、刑罰権というのは大変峻厳であり、慎重に手続きを進めなければならないからです。Q. ゼミや講義ではどのようなことを教えてるのでしょうか?ゼミの内容については、毎年異なっています。各人が自由にテーマを選んで報告する、著名な刑事事件をひとつ取り上げて、その事件の手続上の問題点を深く掘り下げてゆく、新しい立法について検討する、最高裁の判例を読解・検証する、などなどです。ゼミでは、ゼミ生同士で、ディスカッションをします。「最高裁が言っているから正しい」といった、権威に頼るだけで中身のない発言をする人はまずいないですね。仮にそういう発言をすれば、「なぜ正しいか、説明(論証)して」と誰かに突っ込まれることでしょう。自分の頭でとことん考えて、自分の言葉で表現できる学生は、伸びますね。その他、他大学との合同ゼミを開いたり、沖縄や壱岐などでゼミ合宿をしたりすることもあります。このように海外のことが関わってくる法律問題について理解するために必要になるのが、国際私法や国際取引法です。そこで学ぶ知識や考え方は、将来どのような生き方を選んでも役に立つはずです。刑法は、犯罪と刑罰を定めた法律です。この犯罪と刑罰をめぐる様々な問題を考察する学問が、刑法学です。これに対し、刑事訴訟法とは、刑事事件の手続を定めた法律です。刑事訴訟法学では、捜査にはじまり、検察官による事件処理(起訴・不起訴)、公判(裁判)、救済手続(上訴・再審)、そして裁判の執行に至る、刑事手続のあり方を考察します。皆様の中には、大学に入って海外留学をしたい方もいらっしゃるでしょう。安心な渡航計画にするためには、海外旅行保険や留学保険の検討も大切です。それらのパンフレットをいくつか読んでみると、渡航先で「法律上の賠償責任」を負った場合にも保険金が支払われるという内容の説明が書かれていることがあります。これは、留学中に間違えて他人のものを壊してしまったこと等を理由として高額な賠償請求に対応する必要が生じた場合の備えになる項目です。ところで、この「法律上の賠償責任」という表現にでてくる「法律」というのは、「日本の法律」のことでしょうか?それとも「留学先の国の法律」を指しているのでしょうか?講義では、捜査から始まる手続の流れにしたがって、その概要を解説してゆきます。その際には、現在の日本の判例・実務や学説を説明するだけでなく、歴史、諸外国の刑事手続、国際準則にも触れながら、日本の刑事手続が「当たり前」のものではないという相対化の視点をもってもらうことを心がけています。加えて講義の一環として、年に一回ゲストの方を呼んで、講演会を開いています。ゲストの方は、弁護士や事件の当事者の方が多いですね。現状をよく知る方のお話を聴いて、「生きている刑事訴訟法」を知ってほしい、というのが狙いです。もともとは民事しか関心がなかったけれど、講演会をきっかけに問題意識を深め、刑事事件に携わる裁判官になった卒業生もいます。Q. 刑事訴訟法を研究するようになった理由はなんですか?学部生の頃、憲法や法律で定められている原理や原則がなぜ存在しているか、あるいはその原理や原則の内容として学説や判例が説明していることを「当たり前」として受け取っていいのか、ということがとても気になりました。また刑事手続に関していえば、理念と現実とのギャップが大きいことに大変ショックを受けました。特に、誤った有罪判決(冤罪)が現に存在するということを知って、その原因や防止策、また救済のあり方を総合的に考えてみたいと思いました。研究のスタイルは人によって様々ですが、私の場合、物事の根源まで考えたいという哲学的な関心を持つ一方、大学の外に出て、実務家と共同研究する機会も多いです。Q. 高校生に一言お願いします。「公務員になりたい」、「弁護士になりたい」といった、どの職業に就きたいかというよりも、漠然としていてもよいので、社会でどのような役割を果たしたいか、何をしたいかということをよく考え、その「初心」を大切にしてください。そこにブレがなければ、どのような道(職業)を選択しても、後悔することはないのではないでしょうか。Q. Q.国際私法・国際取引法の魅力について教えてください。国際私法・国際取引法の勉強を進めていくと、必然的に、諸国の法の間にみられる相違点や共通点に気づくようになります。それぞれの国の法に反映されているその国の文化や歴史について理解を深めるきっかけになるのも、この分野の勉強をしていて楽しいところです。Q.九州大学法学部で学ぶことの意義はなんですか?世界に開かれた学びの環境が魅力の1つだと思います。国際ワークショップ・講演会・インターンシップ等、海外の大学や国際機関の方々と交流できる機会を充実させることに力を注いでいますので、学生の皆様に活用してほしいと思います。また、留学を希望する場合のサポート体制も整っていますので、このパンフレットのGVプログラムや国際交流・国際教育に関するページもぜひ読んでみてください。Q.大学外ではどのような活動をされているのですか?文化財の国際取引規制や返還問題に関するユネスコ(UNESCO)の諸会議に出席しています。また、ユネスコの諮問機関であるイコモス(ICOMOS)でも、法律問題等を扱う委員会(ICLAFI)に所属しています。難しい問題の連続で色々な課題を抱えていますが、学生の頃から興味を持っていた分野なのでやりがいを感じています。Q.高校生へ一言お願いします。九州大学法学部で皆様にお会いできるのを心から楽しみにしています。勉強に疲れた日には、映画『グリーンブック』もおすすめです。作品として好きなのが一番のおすすめ理由ですが、SDGs目標10(「人や国の不平等をなくそう」)等、法学部で学ぶ色々なことに繋がりのある映画です。八並 廉 先生講義紹介

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る