九州大学 法学部 2023
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19私は、このような行政学の観点から、「消防行政の意思決定過程」というテーマで研究しています。元来消防はヒエラルキー構造が強く、意思決定の場面において、上職の意向の強さが指摘されてきましたが、他方で近年の災害の場などでは現地の知見を活かして柔軟に活動している例が多数みられます。このような緊張関係を秘めた構図の中で、どのように意思決定を行っているのかということについて研究しています。私はその中でも「緊急避難」という制度を研究しています。これは、条件が整えば、なんらかの危険がふりかかった人がやむを得ずに犯罪に当たる行為をしても処罰されないというルールです。危険とはなんの関係もない人が被害者になることに特徴があります。一見理不尽なようにも思える制度ですが、多くの国に似たような規定が置かれています。そうでなければ、危険がふりかかった人は必然的に害を被らなければならなくなるからです。この制度を適切に運用するために、この行為によって侵害されものと守られたものとをどのように比較すればよいかということを考えながら、研究を進めています。Q.刑法の研究を深めたいと思ったきっかけは?学部2年生のときに受講した『刑法総論』の授業がきっかけです。大学入学当初は司法試験の合格を目指して幅広く勉強していましたが、この授業で刑法理論が緻密に構成されていることを知り、一気にのめり込んでいきました。勉強を進めるにつれ、判例・学説の考え方に問題があるところや不十分なところがあることを知り、刑法の研究を通じて、これらの問題解決に関わりたいと考えるようになりました。Q.高校生へ一言お願いします!大学時代は、良くも悪くも自由な時間です。遊びやバイトに耽るのもまたよしですが、大学での勉学を通じて、多くの可能性が開かれることも確かです。入学当初の希望とは異なる進路に進む人もたくさんいます。大学では、多くの専門的知識に触れ、さまざまなことに挑戦をしていただきたいと思います。松崎 太地(修士課程1年)Q.どんな研究をしていますか?私は、行政学を専攻しています。行政学は、行政を観察・分析の対象にして、私たちの生活と密接に関係する事柄を扱う学問です。私たちの生活には様々に「行政」が関わっています。たとえば、皆さんは朝起きて歯を磨くと思いますが、そこで必要な水を提供しているのは、基本的には自治体(行政機関)です。また、私たちが安全に暮らせるように歯磨き粉には行政によって様々な規制がかけられています(行政活動)。行政学では、なぜ、どのようにこれらの行政活動が行われているのか、行政機関の仕組みや実態はどうなっているのかなどを考察していきます。寺嶋 文哉(博士後期課程3年)Q.どんな研究をしていますか?私の専攻は刑法です。なんとなくイメージができると思いますが、犯罪と刑罰にかかわる法律です。罪を犯した人を処罰するためのさまざまなルールが存在しています。刑罰は人の自由や、場合によっては生命を奪うことになるため、非常に重い制裁です。したがって、ある行為が犯罪であると認められ、それに刑罰が科されるためには、処罰される行為とされない行為の線引きをある程度はっきりさせておく必要があります。刑法学は、法律の条文に書いてあることの「解釈」を通じて、この線引きを明確化しようとする学問です。Q.大学院を目指したきっかけは何ですか?学問の奥深さに魅了され大学院を目指しました。学部3年のころ、所属ゼミの関係からなんとなく行政学の著名な本を読んでみたことをきっかけに学問の奥深さに魅了されていきました。現在の知が先人たちの格闘の上に成り立っているということにどこか神秘的なものを感じるとともに、世の中の事象には必ずと言ってよいほど何かしらで学問が結びついていることに気づき、もう少しその世界を覗いてみたいと思うようになりました。Q.高校生へ一言お願いします!皆さんは、日々勉強や部活に追われ、慌ただしく過ごされているかと思います。そんな生活の中では、自分の将来について考える余裕もなく、とりあえず大学に合格することが目標になっているのではないでしょうか。しかしながら大事なのは、その大学に入って何をしたいのかです。大学時代は、様々な人に出会い、様々なことに挑戦できるかけがえのない時間です。ぜひ皆さんには、悔いのない大学・学部選びをしてほしいと思います。大学院生インタビュー

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