九州大学 法学部 2023
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6ですか?ような学問ですか?民事訴訟法のような手続法は、権利を実際に実現するにはどういう手続を踏むのか、ということを定めています。民法は、どんな場合にどんな権利や義務があるのか、ということを決める実体法です。その中でも細かい規定が必要なときは特別な法律を作って個別に定めるのですが、民法は基本法ですから、大原則のようなことがたくさん書かれています。私法の土台を支えるということです。Q. 先生が民法の研究をしようと決めた理由を教えてください。分野の点では、当事者間は対等で上下も強弱もないという理想が当時の私の性に合ったのかなと思います。企業法務の弁護士にも興味があって迷ったのですが、東京の大きな弁護士事務所でエクスターンシップをしたときに、研究の方が自分のやりたいことに近いのかなと思うようになりました。学問としては、もっとも古い歴史のある分野です。人間は集団的に共同してしか生きられません。そこでの集団的意思決定や、力関係を考えることが不可避だから発展した分野だと考えられます。今では、「政府」を中心的な対象にしつつも、政治過程論や比較政治学など、かなり細分化された分野が多数あります。Q.「政治学」の魅力はなんですか?人間と社会をめぐる学問だということが、まず第一でしょう。また「床屋政談」という言葉がありますが、政治については、時間つぶしの対象として誰でも語ることができるということを示しています。ただ、印象論を超えて、分析として、あるいは規範的な観点で、政治を語るには、それなりの知識や経験などが要ります。その意味で、誰にも語れるようで、「玄人」としての語りには専門性が要るということも、面白味かもしれません。Q.先生が特にご専門にされている分野があれば教えてください。博士論文は、韓国の現代政治でした。高校生のときに韓国で発生した光州民主化運動に衝撃を受け、その頃から韓国に興味がありました。博士課程のときには、外務省の専門調査員として、釜山総領事館に勤務したこともあります。九大に就職してからは、日本の自治体をめぐる政治過程に研究対象がシフトしています。講義紹介民法講義紹介政治学Q. 民法とはどのような学問ですか?一言でいえば「普通の人」どうしの間の権利や義務の関係を扱う法です。このような法を私法というのですが、民法はその中でも一番基本的なところを扱います。土地の所有権が誰にあるか、契約が有効かどうか、事故の事後処理をどうするか、などといったことですね。もちろん家族法も民法に含まれます。人の生活に近いところにある法ですから、早くから発展してきました。だから、今の法学というものができあがっていくときにも、民法学はその母体のような役割を果たしたのですよ。Q. 民訴など他の法律や学問との違いはどのような点だとお思いQ. 先生が専攻されている「政治学」とはどのQ. 先生のゼミではどのような事を行っていますか?基本的には、各自で選んだ民法上の争点について担当の回を決めて報告してもらいます。選び方は任せているので、漁師町の出身だから漁業入会権を扱いたいなど、あまり教科書では扱われていないようなテーマを選ぶ人もいますね。年に1回、他の大学の知り合いの民法の先生のゼミと一緒に三つくらいのゼミで合同ゼミをやっています。普段知らない人から評価されるのは刺激になるようです。Q. 法学部ではどのようなことを学ぶのですか?法律を適用するとはどういうことなのか、それぞれのルールはどうしてそう決められているのか、どういう場合にどういうルールが必要になるのか、といったことを勉強してもらうことが重要だと思っています。法律を使う仕事に就かなくても、全く法律に関係のない生活をするということはありませんから、活かし方はいろいろあります。Q. 先生が学生に求める力はどのような力ですか?日本語の文章を読む力をつけて欲しいと思います。理屈を読むのは小説を読むのとは少し違いますから、文字が読めるだけではなくて、こう書いてあるということは、こういう問題意識だな、こういう主張だな、こういうことを根拠にしているのだな、ということが読み取れないといけません。そうしてきちんとした組み立てかたを理解することは、次に自分の主張を書けるようになるためにも必要なのです。Q. 最後に高校生へ一言お願いします。みなさんにはやりたいことはいろいろあると思いますが、勉強については何がやりたいか分からないという人もいると思います。法学部だといろいろな進路で学んだ内容を活用することができるので、そういう人にもおすすめできます。伊都キャンパスは静かで勉強するにはよいところです。大学でお会いできることを楽しみにしています。Q.講座やゼミではどのようなことをしていますか?主に2年生向けの科目として、「政治学Ⅰ・Ⅱ」という講座を担当しています。この講座では、受講する学生に、自由民主主義国家の中で生活する市民として、あるいは有権者として、政治に向き合うことの重要性について認識してもらうことを目的としています。また、ゼミでは、「書を持って街に出る」をポリシーに、大学での議論のみならず、大学外での活動として過疎地域の自治体を巡ったり、社会的な取組みを行っている人に会ったりと、抽象的な理論と具体的な実情を結びつけて理解することに重点を置いています。昨年は、対馬市の地元の人々と共同で、廃校となった小学校の活用について検討するといった活動をしました。Q. 九大法学部で学ぶことの意義について、どのようにお考えですか?九大法学部の出発は、「大正デモクラシー」の時期であり、官僚養成機関としてつくられた先発の法学部とは異なる伝統があります。あえて言えば、市民社会や地域から、国を牽制する役割を担う人々を排出してきたといえるかもしれません。他の大規模総合大学の法学部と異なり、少人数演習が、手厚く準備されているのも、特色です。もちろん空間的に近隣のアジア諸国と近く、アジアに関しては、あらゆる分野が充実していることも特徴です。法学や政治学を学ぶにしても、国や東京からの目線とは異なる観点を、距離の近い教員と学生との関係の中で獲得することが期待できるでしょう。Q.高校生に一言お願いします。受験勉強としてではなく、世界や社会に関心を向けてください。岩波ジュニア新書というシリーズは、大抵の高校図書館にあるはずです。3年間の高校時代に50冊は読破してほしいところです。また、特に近代以降の歴史について学んでくることは、入学後の学習を助けると思います。高岡 大輔 先生出水 薫 先生講義紹介

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