九州大学 農学部 ガイドブック 2024
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%12%08642010090807060504030201010データ:国連食糧納涼機関FAO,FAOSTAT. 注:輸出率,自給率は金額ベース。データ:国連食糧納涼機関FAO,FAOSTAT.注:輸出率,自給率は金額ベース。日本と後発途上国の農産物輸出率・自給率とフードインセキュリティ人口比率の推移(2000~2020年)後発途上国自給率(左軸)後発途上国輸出率(左軸)日本自給率(左軸)日本輸出率(右軸)後発途上国フードインセキュリティ人口比率(左軸)日本フードインセキュリティ人口比率(右軸)19私たち消費者が安全な食料を安定的に確保するには、食料をどのように生産、分配したらよいでしょうか。食料の生産、分配を支える農業や食品加工業、食品流通業を持続的に発展させるには、これらの産業に競争と保護のどちらが必要でしょうか。食料の生産や分配、消費を自然環境と調和させるにはどうしたらよいでしょうか。これらを研究しているのが農政経済学分野です。研究は、経済学や経営学などをもとに、社会科学的に行っています。しかし、単に経済学や経営学の理論を応用すればよいわけではありません。農業が自然条件に左右される点や、家族や地域社会によって営まれる点など、他産業にはない特質を十分に踏まえなければなりません。そのため、農政経済学分野では、統計分析や実態調査分析を利用した、事実に基づく実践的な研究が重視されます。現在、農政経済学分野では、食料消費の多様化、経済のグローバル化、食料の安全性や環境保全に対する消費者意識の高まりなどを背景に、研究の多様化が進んでいます。それにともない、学生の就職先も、食品メーカーや公務員といった食料、農業に関係する業種だけでなく、銀行や商社など多岐にわたっています。農政経済学分野とアジア、欧米の学生が相互に留学する機会も増えています。社会科学と実践、多様性を特徴とする農政経済学分野で、ぜひ一緒に学びましょう。農政経済学分野長 磯田 宏農政経済学分野は,食料農業政策学,農業経営学,食料経済分析学,食料流通学および環境生命経済学の5つの研究室から構成され,社会科学的な視点から国際色豊かに,食料・農業・農村・資源・環境に関する教育と研究を行っています。生物資源生産科学コース食料供給力の脆弱な日本や途上国が今後も輸出を増やしながら自給率を下げても大丈夫? グラフは,食料⾃給率が際立って低い⽇本と後発途上国(開発途上国の中でも総合的に最も貧しい国々)が,この20年間ほどの間に農産物輸出を増やしながら⾃給率を下げてしまい,それぞれの国においてフードインセキュリティ(食料不安状態)にある人口比率を高めてしまっていることを示しています。こうした事態の要因と打開策を,世界の農業食料貿易ルールや各国の通商政策・食料農業政策などをふまえて考えていく必要があります。また⽇本各地の農山村地域における持続可能な社会をいかに維持するかも差し迫った課題となっています。現場での深い実態把握にもとづいて,これらの打開のための政策を考察していきましょう。農業経営リスク管理・食品トレーサビリティを支援する情報システム 安全な食料を持続的に供給するためには,農業生産・経営におけるリスク管理や食品流通経路情報を管理するトレーサビリティが重要になっている。これらを支援する情報システムの現地実態調査や設計・開発が期待されている。そうした情報システムのあるべき姿を一緒に考えましょう。食の安全に関する国際共同研究 ⽇本は供給カロリーベースで6割を,アメリカや中国など海外からの農産物輸入に依存している。安全な食料を持続的に供給するためには,各国における現地調査やリスク認知状況など国際的な共同研究が重要になっている。安全な食料を持続的に提供できる次世代の農業や食料生産について,理論的,実証的に学びましょう。社会科学的に食料・農業・農村・資源・環境のあり方を考える分野長による分野紹介農政経済学分野

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