九州大学 農学部 ガイドブック 2024
21/48

20 農業や農村をめぐる経済格差の原因と解決策について,数理モデルや統計分析,シミュレーション分析のツールを利用して,科学的に究明しています。経済格差は,農産物や農業資材の売り手ないし買い手の一方が,価格交渉⼒を過度に強めることが大きな原因の1つになっています。価格交渉⼒が弱いと,農業・農村サイドはいくら努⼒してもなかなか報われません。経済格差の解決には,政策によって⾃由競争と公正のバランスをとりながら,農業・農村サイドの価格交渉⼒を高めることが重要になります。農政経済学分野では、農業を取り巻く食料や環境問題などについて、経済分析を通じて学ぶことができます。私は学生時代に、農業生産資材の価格引き下げが経済厚生に与える影響について統計分析を行いました。分析においては、経済学の知識を習得するだけでなく、国内外の社会情勢や農業政策の背景を考える必要があります。現在は、普及指導員として、農業者の農業技術や農業所得を向上するための業務に携わっています。学生時代に学んだ知識や、農業政策の背景を考え、分析することは、現在の仕事にも確実に生きています。本分野は、多様な職業に適用できる農政経済学を身につけることができるため、皆さんの可能性がより一層広がります。広い視野を持ち、様々なことにチャレンジして、充実した学生生活を送りましょう!「視野を広げ、考える力を身につけよう」2016年度 学部卒業下田 惇平熊本県庁農林水産部農産園芸課 農政経済学分野の学生は現代社会の諸要求に対応できるので,農林水産省や県庁などの行政機関をはじめ,銀行,農協,商社,食品メーカー,テレビ局,コンピュータ・メーカーなど,就職先も広範多岐にわたっています。産業間・地域間・国家間の経済格差青果物卸売市場でのセリ取引 テレビでよく活気あるセリ取引の様子が放映される。このセリ取引を行っている農産物卸売市場は,全国各地で生産される農産物を集荷し,価格を決定し,小売業者に分荷することにより,社会に農産物を供給する重要な役割を果たしている。このような流通機能がしっかりと発揮されてこそ,農産物の需給は安定化され,生産者は売れ残りがでないよう販売でき,消費者は不足することのないよう購入できる。世界には農産物の需給が不安定で流通の近代化が求められる地域もあるし,需給の安定化が達成されてもさらなる高度化を目指している地域もある。農産物流通のあり方について,理論的・体系的に学び,現場を訪れ,考えていきましょう。地環規模の環境保全と農業⽣産 農業・農村の持つ新たな可能性を経済理論・計量分析ツールを用いて科学的に究明しています。また,農業・農村は,食料生産に加えて,有機物の循環,再生可能エネルギーの供給,美しい景観や安らぎの場の提供,多様な動植物の保全,伝統的な文化や先人の知恵の継承など,多様な価値を生み出しています。そこで,生態系や生物多様性の保全はもとより,⾃立分散型エネルギーシステムに基づく循環型社会の形成,農文化システム維持のための制度構築,新たな価値をもつ商品の市場評価など,「農業」と「環境」,「健康」,「バイオエネルギー」をキーワードに多様な視点からの議論が必要になります。真のwell-being(幸福)とは何かを考えていきましょう。卒業生の活動の分野卒業生からのメッセージ

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る