九州大学 農学部 ガイドブック 2024
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22 微生物は、我々ヒトにとって様々な有用物質を生産し、これを広義の発酵と呼びます。しかし、個々の有用物質が細胞内で、「いつ、どこで、どのように」作られるのかについては、未解明の点も多く存在します。そこで、蛍光顕微鏡を用いた分子細胞生物学的研究手法を中心に、細胞内を詳細に解析することで分子機構の全貌を解明しようとしています。一例として、発酵醸造に用いられる黄麹菌において、有用糖化酵素であるグルコアミラーゼのmRNAが細胞内で転写・翻訳・輸送される分子機構の研究を行っています。こうした研究を通じて、有用物質のさらなる高生産を目指します。 地球規模の環境ストレスに適切に応答する医薬品および食料生産法の開発が求められています。そこで我々は、多様な生物現象に対応できる生体親和性の極めて高い新規有機小分子化合物の開発を基盤として、バイオスティミュラントおよび脳疾患・免疫制御・感染症などの治療薬の創生に挑戦しています。このような医農薬品開発のアプローチは世界的に見て例がなく、学術と産業の二面から貢献することが期待されます。私は、学生時代に微生物の遺伝子解析を通してダイズの栽培に有用な遺伝子の探索をやっていました。作物栽培に触れていくうちに、持続可能で高効率な食料生産に携わりたいと思い、今は肥料の開発に従事しています。私が高校生の時もそうでしたが、将来やりたいことがまだ漠然としている方もいらっしゃると思います。応用生命化学分野は遺伝子や作物関係だけでなく、とても広い範囲の科学的な知識や経験を得られるので、みなさんの将来の可能性を広げるのにうってつけです。ぜひ目指してみませんか?「可能性を広げる場所」2015年度 修士課程修了沖崎 光平ジェイカムアグリ株式会社 卒業生の90%以上が大学院修士課程に進学します。卒業生と修士・博士修了者の主な就職先は,食品(明治製菓,日本製粉,森永製菓,カゴメ,ニチレイ,日本油脂など),発酵・醸造(キリンビール,アサヒビール,サッポロビール,三和酒類,キッコーマン,味の素など),化学工業(三菱化学,住友化学,積水化学,旭化成など)医薬品(中外製薬,万有製薬,エーザイ,小林製薬,化学及血清療法研究所など)環境関連(化学品評価検査協会,住友農業資材,日本食品分析センター,ライト工業など),公務員(農水省及び県の試験研究機関),大学・高校教員などです。発酵微⽣物による有用物質⽣産能の全貌を解明する有機合成化学の力で多様な環境ストレス応答を制御する食料⽣産法および医薬品の開発卒業生の活動の分野卒業生からのメッセージ

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