九州大学 農学部 ガイドブック 2024
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23毎日ご飯を美味しく食べていますか?動物は生きていくために食事を摂ることが必須ですが、それは生命活動の維持に栄養素の摂取が必須だからです。しかし私たち人類は、ただ栄養素を摂取するのではなく、美味しい食事を摂ることによって物理的にも精神的にも健やかな日々を送ることができます。またその食べ物は安全であるか、健康に寄与するものであるかなどは、私たちが健康的な生活を送るための重要な要素です。さらには人類が安定してこの世界で暮らし続けるための目標達成のためにも未利用の生物資源の食品への利用や加工食品の生産工程改善によるエネルギーロスの削減など、食品分野にはまだ多くの課題が残されています。食糧化学工学分野では、最先端の食サイエンスとバイオテクノロジーを駆使して、生命の維持や人類の幸福に貢献する研究の遂行と人材の育成を目指しています。本分野は「健康」、「安全」、「品質」、「エネルギー・環境」に関わる諸問題の解決を目指す9研究室から構成され、我が国だけでなく世界の食科学をリードする研究と教育を実践しています。これまでに、医学・薬学・工学等の分野と連携した学際的かつ優れた研究業績をあげているだけでなく、社会で活躍できる多才な人材を送り出しています。次世代の食科学を担う、情熱をもった学生が多く集うことを期待しています。皆さんはマヨネーズやバターなどの食品がどの様な形態を取っているか知っていますか?これらの食品は水と油などのそのままでは分離してしまう食品素材を小さい液滴状にして分散させることで安定な形態をとっています。このような形態は乳化と呼ばれています。実は皆さんの身の回りにはこのような乳化を利用した商品がたくさんあります。乳化ではこの小さい液滴を均一(単分散)かつ大量に作る操作が重要であり、単分散な液滴を効率的に作る方法として私たちの研究室では高速旋回流膜乳化法を開発しました。図に示したように、この方法を用いることで従来法よりも単分散でより小さな液滴を作ることができることがわかります。他にもエマルションや香りに関する多くの研究を行なっています。従来法による乳化と高速旋回流による乳化の比較。従来法では様々なサイズの液滴ができてしまっているが、旋回流方式ではほぼ均一なサイズの液滴になっている。我々の腸内には数百種の細菌が総計数十兆個生息し、生態系(フローラ)を形成していると言われています。それらは人が⽇々摂取する食べ物を栄養素として増殖していますが、最近の研究から、その代謝物や菌体成分が、我々の健康に大きな影響を及ぼしていることが分かってきました。私たちの研究室では、アジア諸外国の研究グループや、医学部の研究グループ等と共同で、何を食べるとどのような腸内フローラが形成され、それが我々の健康や疾病とどのように関わっているのか研究しています。食糧化学工学分野長 井倉 則之応用生物科学コース回せば均一な液滴がたくさんできる?食と健康のインターフェース“腸内フローラ”の実態調査フードサイエンス&テクノロジーの旗手として 食糧化学工学分野は,科学(生物学,化学,物理学)を基盤として最先端の食科学に関わる研究と教育を行う我が国唯一の食総合科学分野です。分野長による分野紹介食糧化学工学分野

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