九州大学 農学部 ガイドブック 2024
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25私たちの社会は自然環境と共に成立しています.森林はこの環境を構成する要素の一部であり,生物多様性の維持,水資源や国土の保全,木材や食糧などの供給,快適な生活環境の形成等,多くの機能を有しています.また近年では,地球温暖化の進行を緩和する森林の機能にも注目が集まっています.そして森林が貴重な再生産可能な社会・経済的資源であり,再生産の1サイクルが少なくとも数十年単位であること等を考えると,社会の成立およびその持続的発展のためには,長期的かつ地球規模の視野にたって森林の機能及び森林と社会の関係を探求し,そこから得られた成果を実社会に還元することが必要です. 以上を背景として森林機能制御学分野では,自然環境や国土の保全,自然災害に対する森林の防災機能解明,森林資源の計測に関する新技術の開発,持続可能な森林管理と経営手法および計画,そして森林に関わる政策などを,具体的な教育研究の対象としています。当分野は,森林計画学,森林保全学,森林政策学という 3 つのフィールド系研究室で構成され,この 3 研究室が連携協力しながら 教育・研究を行っています。当分野の特徴は持続的な森林の維持管理の実現すなわち社会の持続的発展を目指して,自然科学と社会科学の両方の立場から 総合的にアプローチしていることです. 前世紀から続く地球規模の気候変動により,九州などでは強い雨が統計的有意に増加しており,これまでは安定していた森林斜面が崩壊して荒廃する(写真左)ことも多く見られ,森林資源損失の軽減と再森林化(山腹工:写真右)による森林・林業の持続が重要な課題となります。これらは世界的な課題となっています。森林機能制御学分野長 溝上 展也地球森林科学コース森林は,人間の数世代にわたる長期間を想定しながら育て,管理しなければなりません。森林機能制御学分野では,森林資源を超長期にわたって健全に維持することを目的に教育・研究を行っています。具体的には,自然環境の保全と国土保全,自然災害防止にかかわる森林の機能の解明,森林資源の計測に関する新技術の開発,木材の⽣産と環境保全を調和させた森林経営や森林政策などを教育・研究の対象としています。豪雨の増加による森林の荒廃(写真左)とその復旧・再森林化(写真右)も重要な課題22世紀の子供達に豊かな森林を残すために,持続可能な森林の管理と経営を目指した教育と研究を行っています分野長による分野紹介森林機能制御学分野

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