九州大学 農学部 ガイドブック 2024
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27森林生態系の謎をDNAで解明する 森林は地上で最も多様性に富んだ生態系で,DNAに記録された遺伝情報の宝庫です。地球の長い歴史の中で形成されてきた生物多様性や,遺伝情報を理解し,保全していくことは人間の営みにとって不可欠です。森林の複雑な生命現象をDNAを通じて明らかにし,よりすぐれた性質を持つ森林を育てるための研究を進めています。森林生物の潜在的な有用性を活用する  森林を構成する多種多様な樹木,キノコやその他の生物は,様々な化学成分を合成し蓄積・放出しています。まだ知られていない抗菌・抗ガン・リラックス効果などの生理活性を持つ有用成分を探索すると同時に,その生合成機構の解明を行っています。また,森林資源を生かした,健康や快適空間を促進するための研究を進めています。木材のサイエンス 木材は強靱さや和やかさなどの多様な機能を持ち,環境に優しく,人類が快適・安全に生活するためには不可欠な資源です。この資源の利用を持続可能なものにするため,樹木の育成と材質の評価を行い,次世代の木質資源を創出するための研究を行っています。分子レベルから樹木の機能を解明する 樹木は,光エネルギーを化学エネルギーに変換します。葉緑体は二酸化炭素を固定し,セルロースやリグニンなどの高分子化合物に変換し,樹幹に蓄積します。炭素蓄積効率や環境適応力を高めるために,遺伝子や分子レベルでの生理機構の研究を進めています。木質バイオマスの高度利用による循環型社会を目指す 樹木(木質バイオマス)を高度利用して循環型資源として活用することは,地球温暖化防止や化石燃料資源の枯渇問題に対する重要な解決策の一つです。未利用材や木質バイオマス廃棄物の燃料変換技術の開発や,遺伝子工学的手法によって木質バイオマスを利用しやすくする研究にも挑戦しています。(上図は小学館の「世界の木材」から引用)森林機能開発学分野長 渡辺 敦史地球森林科学コース木材の構造 形成層活動の結果,樹幹の内側に木部が形成されます。この木部が年々蓄積されたものが木材です。木材は主に炭素,水素,酸素からできているので,樹木は炭素を固定し続けることに貢献しています。森林生態系の未知の機能を探る 森林機能開発学分野では,森林とそこに生育する多様な生物を分子から生態系までの幅広い視点から研究し,これにより地球環境を保全・修復することを目指しています。分野長による分野紹介森林機能開発学分野

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