九州大学 農学部 ガイドブック 2024
29/48

28 植物細胞の中では,葉緑体やミトコンドリア,ペルオキシゾームなどの細胞小器官と細胞質の間をいろいろな物質が移動します。移動する物質の量や速度が変わると,光合成の効率や樹木の成長は大きく影響されます。この物質の移動を葉を壊さずに測定したり,コントロールする技術は急速に進歩しています。 写真は,東南アジア熱帯降雨林(フタバガキ林)です。現在,急速に消失し,地球環境にとって大きな問題となっています。熱帯地域の遺伝子資源を守り,熱帯林を修復・再生するためのDNA研究が世界規模で進められています。(上の写真はDNA塩基配列分析)スギの無垢材を内装に用いた部屋と非無垢材のもので、それぞれ作業課題を行ってもらいました。その際のLF/HF(交感神経系指標:緊張状態を反映する)の経時的変化を記録しました。その結果、非無垢材よりも、スギの香りが豊かな無垢材の部屋の方が、課題中及び課題後において、LF/HFが低いことが分かりました。このことから、スギの香りは、作業によるストレスや緊張を抑制し、落ち着かせる(リラックス)効果を持つ可能性が示されました。 地球上バイオマスの90%以上を占める樹木細胞壁の形成機構を,遺伝子工学,生合成酵素,成分化学,組織科学を駆使して解明し,バイオエタノール,化成品原料,紙・パルプ等に利用しやすい樹木の開発を通して,二酸化炭素排出の少ない持続的再生産社会の構築を目指しています。 成長が早い樹木は高炭素固定能を有し,地球温暖化防止に貢献しています。また,植栽から収穫までの期間が短く,育種することで次世代に高品質の木材を生産することができます。写真は,これまで使われてこなかった国産の早生広葉樹の中からインテリアに適した樹種を発掘し,試作したイスです。インテリア業界からも高い評価を受けました。「自分の世界を広げる」2022年度 修士課程修了今東 実⽣株式会社フィクシー卒業生のおよそ8割は大学院修士課程に進学しています。学部卒業者と修士修了者の主な進学先は,公務員の場合,農林水産省,国土交通省,地方自治体の行政および研究職,また民間企業では,製紙,化学,住宅・建材,商社,情報,環境など幅広い分野にまたがっています。⽇本の森林面積は、国土の約7割を占めています。森林機能開発学分野では、森林を構成する多様な生物を幅広い視点から研究することができます。例えば私は、マツノザイセンチュウというマツの木に寄生しマツを枯損させてしまうセンチュウについて、DNAやRNAを用いた分子生物学的な視点から研究していました。一方、本分野にはスギの起源について研究している人、樹木の構成成分について研究している人、葉緑体について研究している人などがいます。まだやりたい事が明確じゃない、けれど、森林を取り巻く生物になんとなく興味がある方は、本分野に進んで様々なことに触れ、学び、知っていくことで、きっとやりたいことを見つけられると思います。皆さんが知識を得る過程で⾃分の世界を広げ、「もっと知りたい!」と思えるものに出会えることを願っております。葉の不思議森林とDNA研究木の香りがもたらす人への効果樹木細胞壁形成の統合サイエンスインテリアに適した国産早⽣広葉樹の発掘卒業生の活動の分野卒業生からのメッセージ

元のページ  ../index.html#29

このブックを見る