九州大学 農学部 ガイドブック 2024
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31食肉,乳そして卵は,陸圏に生存する動物から人類への大切な“食の贈り物”です。アニマルサイエンス分野は,これらの動物に関する広範な学問領域を対象として,教育・研究を行っています。具体的には,動物のからだの仕組みや働き(組織学・形態生理学),精子や卵子の発生と生殖(繁殖生理学),栄養と行動・情動の連関(代謝・行動情動制御学),骨格筋の肥大・再生・萎縮と食肉生産(筋肉・食肉科学),大型家畜の生産(家畜生態学),野生動物の生態(動物学)などに関する基礎研究を基盤として,動物資源の高度利用,機能性食品の開発,飼料資源の評価といった応用研究にいたる幅広い領域を包含する学問です。また,ラットやマウス(実験動物)を用いて,ヒトのスポーツ・健康科学などへの貢献を志向する研究も盛んに行っています。現在、卒業生の大半は大学院に進学しています。修士課程修了後の就職先は,食品会社(最近の例として,伊藤ハム,味の素),飼料会社(協同飼料),製薬会社(小野薬品,小林製薬)の他,シンクタンク系会社(蓄積した知識をもとに情報を分析し提言する企業;日鐵住金総研),総合商社(丸紅)などであり,幅広い職種に就いています。公務員(農林水産省,東京都,長崎県、福岡県、福岡市)や大学教員(九州大学,京都大学,北海道大学,宇都宮大学,弘前大学,北里大学)への就職が多いのも特徴です。陸圏の動物に関して,数多くの未解明の生命現象とこれらを巧みに制御している仕組み(分子機構)について情熱を持って追究し,広い視野で動物科学を学ぶ学生を求めています。私達と一緒に動物の“不思議”を探究しませんか。アニマルサイエンス分野長 安尾 しのぶ左. 培養中の多能性幹細胞(ES・iPS細胞)中. 培養下で再構成された精巣様構造右. 培養中の精子幹細胞動物生産科学コースウシの妊娠認識物質と子宮腺産⽣因子の解析 家畜胚は透明帯から脱出したのち細長い形態へと伸長し(伸長期胚),その後着床を開始する。これはヒトやげっ歯類では見られない家畜胚の特徴である。ウシの早期胚死滅は主にこの時期に発生するため,伸長期胚の産生する妊娠認識物質と,その刺激およびプロジェステロンによって制御される子宮腺産生因子の解析は受胎率向上に重要である。⽣殖細胞形成の仕組みを調べる 様々な動物や多能性幹細胞・精子幹細胞などの様々な幹細胞を用いて,生殖細胞形成を制御する分子機構を調べています。この研究を通じて動物種間の多様性の解明や体外での生殖細胞形成など動物学・畜産分野・医療分野への応用が期待されます。牛が好む牧草を調査する 写真は久住高原での野外草地調査実習。家畜飼料の有効利用のために,飼料の摂取量を調節するメカニズムや飼料の消化機構についての生理学的研究も行われています。生命と環境のため動物を科学する分野長による分野紹介アニマルサイエンス分野

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