Philosophy Course▲ 東プロイセンの偉大な哲学者エマニュエル・カント(1724-1804)の像10 哲学とはいったいどんな学問なのでしょうか?何やら難しそうな学問だというイメージはあったとしても、「哲学とは何か」という問いに答えられる人はそれほど多くないはずです。実は、哲学者たち、あるいは哲学研究者たちにとっても、この問いは決して簡単に答えられるものではありません。 私自身、大学で哲学を研究し教える身でありながら、ふいに誰かから「あなたの専門分野の哲学とは何をする学問なのか?」と問われると、しばし考え込んでしまいます。結局まとまりのない話をして、相手に煙たがられた末に、「簡潔で差し障りのない答えをあらかじめ準備しておけばよかった」と後悔することもあります。 しかし、哲学にはそうした風変わりな側面があることは否定しがたいように思われます。つまり、哲学者にとっても、「哲学とは何か」は自明ではなく、それはたえず問いつづけられる問いとして残されているのです。これは「○○学とは○○について研究する学問だ」と即答できるような他の多くの学問とやや異なる点かもしれません。もう少しまともな言い方をすれば、哲学は、つねに自らの規定自体に意識を向けつづけるという意味で、すぐれて「自己反省的」な学問なのです。 とはいっても、私はこの文章を、これから文学部で学ぼうとする人たちに向けて書いていますので、以下では、「哲学とは何か」についての私自身の見解を、不完全な仕方ではありますが、述べておきたいと思います。 ある偉大な哲学者はかつてこのようなことを言いました。哲学とは何か倉田 剛 (哲学・哲学史)哲学コースつねに物事の根本に立ち戻り、世界をひとつの全体として思考する
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