九州大学 2024年度 理学部案内
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15実験・実習有機化学実験有機化学機能性材料や医薬品など有用な有機分子を自在に合成するために、均一系触媒や固体触媒を利用した新しい合成方法論の開拓を行っています。工業的な応用を目指し、必要最小限の資源とエネルギーを用いて目的化合物のみを与える環境に優しい合成法の開拓を行っています。また、動植物や微生物から単離された生物活性化化合物の全合成、および活性発現機構の解明や新しい薬剤の設計・合成に取組んでいます。量子化学物質や生命を形づくる素である原子・分子とその集合体(クラスター)に注目して、原子や分子を扱うミクロな視点から、物質の構造や化学的な性質を解き明かす研究を行っています。実験と理論を両輪に、分子の運動や電子の状態を光で観る分光実験、原子間の結合を組み換える反応実験で、電子や原子・分子の動きを追跡しています。また、ミクロな世界を記述する基礎方程式の解法を探り、生体分子など複雑系への応用も視野に入れ、化学現象の多様な世界を明らかにする理論の構築に取り組んでいます。 生物化学からだの中では、分子が細胞から細胞へと情報を伝えています。そして「生きる」ために、細胞はそうした情報を「理解」し、それぞれに特有な機能・働きを発揮します。そこでさまざまな生体分子(酵素、ペプチド、タンパク質など)が活躍しています。こうした細胞の神業ともいうべき働きを可能にする分子の構造、細胞膜、溶媒環境などについて、一つ一つの分子に熱い視線をあてたバイオ実験・研究を行っています。化学科では、最初にガラス器具の取り扱いと組み立て、抽出、蒸留、再結晶、融点測定、薄層クロマトグラフィー、ガラス細工などの実験基本操作を実習します。引き続いて分析化学、無機化学、有機化学、生物化学、構造化学、物理化学の計六つの学生実習を行います。写真は有機化学の実習をしている学生実験のようすです。有機化学実験では、それまでに講義で学んだ有機化学の知識に基づき、有機合成実験を行います。実験を通じて、有機化合物の立体構造・性質などの理解を深め、さらに各種測定法の基本原理、測定データの整理、解析手法などを習得します。無機化学新規金属錯体や無機化合物の合成や探索を行い、その物性や機能の本質を、基礎化学の観点から解明することを研究目的の中心に据えています。具体的には、多核金属錯体の構造と機能の相関、動的電子状態に由来する固体物性(伝導性、磁性、誘電性、光物性)、水素貯蔵や水素エネルギーに関わる物質、金属酵素モデル錯体をはじめとする生体機能関連物質、多孔性配位高分子のガス応答による物性変換などの研究を展開しています。分析化学最先端の分析装置や新たな分析手法を開発するとともに、それらを生体や機能性材料、環境問題に適用する研究を行っています。具体的には、生体膜における脂質と膜タンパク質の相互作用の解析や、麻酔などの生体膜に作用する薬剤の作用機構の解析を行っています。また、超高速で起こる化学反応を実時間で観測できる装置の開発、およびそれを利用した機能性材料の動的過程の解析を行っています。さらに最先端原子分解能顕微鏡、同位体分析、放射光マイクロビームX線分析を駆使しながら環境問題のミクロな解析を行っています。物理化学両親媒性高分子、高分子電解質を生体高分子モデル系として、生命現象を物理化学的に理解するための基礎研究と新規バイオマテリアルの開発、生体由来高分子ゲルの構造・物性変化と様々な病態変化の相関に関する研究を行っています。また、レーザーを駆使した新しい分子イメージング法の開発と先端材料・生細胞・生体組織の分子レベル可視化に関する研究をしています。化学科で行われている研究

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