九州大学 2024年度 理学部案内
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05図3「ジュリア集合」図2「周期倍分岐」図4「マンデルブロー集合」Commonsより転載)はどれもそのフィールズ賞の受賞も求められるし、頂点の座標も計算できるし、わからないことなんて何もない、と思われるかもしれません。しかし、上のように単純な2次関数から作られる数列の裏側には実に深遠な数学の世界が広がっており、それを主題とした研究で(数学のノーベル賞ともよばれる)フィールズ賞を三人の数学者が受賞しています。詳しいことはここでは述べませんが、下の3つの図(いずれもWikimedia 理由を表現しています。 一番目の図は上のように2 次関数から得られた数列をある方法でプロットした(周期倍分岐と呼ばれる)対象、二番目の図は2 次関数から得られる数列を複素数まで拡張したときに現れる(ジュリア集合と呼ばれる)対象、三番目の図は二番目の図に現れた対象がある性質を満たすようなパラメータc 全体の(マンデルブロー集合と呼ばれる)対象です。このような集合は、皆さんが良く知っている直線やなめらかな曲線などとは異なり、いくらでも微細で複雑な構造を持っているのが特徴で、「フラクタル」とも呼ばれます。これまでフラクタルは単に病的な数学的対象とみなされ、真剣には研究されない時期が長く続いていました。しかし、力学系理論の研究やコンピュータ・グラフィックの進歩に触発されて、興味深く美しい研究対象として次第に脚光を浴びるようになったのです。さあ、単純だけど深遠な、病的だけど美しい、力学系の世界へようこそ。

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