九州大学 医学部 医学科紹介 2023
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− 12 − 2023年5月15日〜6月9日まで慶尚大学病院にて病院実習をしてきました。きっと一生大切にするであろう学びと経験ができた留学でした。〜実習〜私は韓国と日本の文化的な違いがありそうな領域を見てみたいと考え、精神疾患のエピソードの違いを知りたくて精神科を、家族感情の違いに興味をもって産婦人科を選択し、それぞれ2週間ずつ回りました。精神科では初めの1週間は韓国の学生と一緒に回りました。精神保健福祉施設において通所されている方に曲当てゲームなどを企画する実習が印象的でした。この診療科は医師の先生が何かをレクチャーすることよりも、学生主体の実習が多かったように感じます。また、後期研修の先生の講義では、治療に正解を出すことが難しい疾患についての議論を提示してくださり、非常に興味深かったです。2週目は学生が回っていなかったので、基本的には医局に待機しながら、救急での対応を見学したり、患者さんと遊んだりしました。実習の合間に、精神という不確かなものからどう情報を引き出し、どう扱うかという問題について、方法論を中心に教えて頂きました。患者さんのエピソードの中にも、例えば軍に関わることなど社会的な違いが見られ、とても興味深かったです。また、生い立ちから愛情に飢えているが故の行動をとってしまうような症例も見学しました。その問題の困難さは帰国した今も印象深く残っています。産婦人科では基本的に手術を見学しました。家族感情について興味があることを伝えると、professorの先生が「11歳の息子がいるから、家で一緒に夕飯食べる?」と誘ってくださいました。息子さんと話したり、先生や旦那様からその馴れ初め、お子さんの将来についてなど伺うことができました。韓国と日本では多少アプローチが異なる部分もありますが、親が子に対する気持ちに文化的な差はそこまで感じませんでした。国とか関係なく、家族の数だけ形があるのかもしれません。最終週に自己紹介と九州大学病院、そして将来の夢についてプレゼンしました。英語でプレゼンするのは初めてでしたが、今回の研修の集大成として、英語で自分を表現することは非常に充実感がありました。〜英語〜今回の留学で最も印象的といいますか、自分の認識に影響を及ぼす強度で感覚を変えられたのは英語でした。英語についてはプログラミングや作曲で情報を集めるときに使うくらいで、これまで意識して勉強をしてきませんでした。しかし実習を始めると、違った文化で育ってきた学生や医師の先生方とお話しするのが楽しくて、方言を覚えるように自然に上達していきました。お互い第一言語ではない言葉で、お酒を飲みながらノリやテンポを共有し、互いの深いところにある考えを示し合うのはすごく心地よかったです。制限されたボキャブラリーで、少ない文型しか手持ちにない状態で思考するからこそ、第一言語では澱みがちになっていた思考もすっきり気持ちよく伝えられたのかなと分析しています。口や手を動かして伝え、相手からのフィードバックを受けコミュニケーションへの理解が深まり、それを受けてまた身体を動かして上達していくのが凄く気持ちよかったです。これから他の物事に取り組む際も、こんなフィジカルなアウトプット主体のループの感覚を忘れず、大切にしていきたいと感じています。 九州大学医学部では、国際交流も盛んに行われています。 釜山大学校医科大学、仁済大学、慶尚大学とは、学生交流を行っています。 ドイツのグーテンベルク大学や、アメリカのクリーブランドクリニックで臨床実習(クリニカルクラークシップ)を受けることもできます。 また、公益財団法人医学教育振興財団が実施する、イギリスの大学医学部での臨床実習のための短期留学もあります。国際交流人生初の留学を終えて〜慶尚大学病院での実習〜 医学科6年 野方 保孝

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