2023 KYUSHU UNIVERSITY, SCHOOL OF DENTISTRY186. 歯周病のアルツハイマー病への関与メカニズム 重度歯周病の罹患は認知機能低下と正相関し、歯周病菌のPorphyromonas gingivalis(Pg)菌の内毒素LPSが認知症の7割を占めるアルツハイマー病患者の脳内に検出されています。我々はPg菌のアルツハイマー病への関与メカニズムの解明に取り組んでおり、これまでPg菌とそのLPSがアルツハイマー病脳病態を誘発し促進する、全身炎症を増大させる、全身でアミロイドβ産生を誘導する、全身のアミロイドβを脳内輸入させるといった多方面的にアルツハイマー病の誘発と病態進行に関与することを明らかにしてきました。歯周病のアルツハイマー病への関与機序を究明し、認知症予防のため有効な情報発信が期待されています。7. 妊娠母体の栄養状態による次世代生活習慣病発症メカニズムの解明 超高齢社会を迎えた我が国では、「口腔機能の健康」と「適切な食生活と栄養摂取」が健康寿命延伸とQOL向上のために重要視されています。従来、病気の原因は、主に遺伝や出生後の環境にあると考えられてきましたが、出生前(妊娠母体)の栄養状態も、子の病気の発症に影響を及ぼすことが分かってきました。そこで、研究チームでは、妊娠母体が摂取する各種栄養素やその代謝産物が、子の各種生活習慣病の発症や進行に及ぼす影響を追究しています。8. 口腔機能が全身の健康状態に与える影響の検討 咬むことや飲み込む機能が回復することは歯科医師にとっての歓びです。しかしながら、これらの機能は年齢や病気などの影響により、低下することがあります。そこで、病院の患者さんや地域にお住いの住民の方を対象に、口腔機能を評価し、それらが認知機能や運動機能にどのように関連しているのかを調査しています。さらには、口腔機能を改善させるアプリケーションソフトの開発をしており、口腔機能に着目した介護予防法の確立を目指しています。
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