九州大学 歯学部 2023
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2023 KYUSHU UNIVERSITY, SCHOOL OF DENTISTRY204. 歯の発生過程に重要な遺伝子群の網羅的解析 歯を再生させるためには、歯がどのようにして形成されるかしっかり理解する必要があります。次世代シークエンサー等の革新的な分子生物学的技術の発展により、歯を構築する一つ一つの細胞が、どのような遺伝子を発現しているかを時空間的に網羅的に把握できるようになってきました。また個々の遺伝子がどのような役割を演じているかを知ることも重要です。歯に特徴的に発現する遺伝子の機能解析により、歯を構成する細胞群の分化メカニズムを詳細検討しています。5. iPS細胞等を用いた歯の再生技術の開発 iPS細胞は、体を構成する全ての細胞に分化可能な万能細胞です。歯がどのようにできるのかということを明らかにしていく過程で、歯の発生に重要な分子を見つけ出し、その分子の機能を制御することで、iPS細胞から歯の形成細胞であるエナメル芽細胞(エナメル質を作る細胞)、象牙芽細胞(象牙質を作る細胞)を人工的に誘導する技術を開発しました。またこれら歯を作る細胞を組み合わせることで、iPS細胞から歯を作ることも可能になっています。しかし実際に臨床に応用するためには、できた歯の安全性の確保、歯の大きさや形の制御が必要になってきます。より正確で確実な歯の再生技術の開発に取り組んでいます。6. 新規生体材料を用いた歯周組織再生 歯周病は、歯を支える歯槽骨の破壊を伴う疾患であり、支える骨の喪失により歯が脱落します。またそこにインプラントなどで人工的な歯を再建する場合にも、失われた骨を再生することは極めて重要です。これまで多くの人工骨補填材が開発されてきましたが、生体の骨と完全に類似のものを作るには至っていません。そこで生体の骨の特徴を理解しながら、安価で効率的に骨を再生する材料の開発に取り組むとともに、生体親和性の高いインプラント体についても企業と連携しながら開発に取り組んでいます。を改善することで、摂食や嚥下といった口腔機能を回復させることができます。また歯や唾液腺の発生は、毛や肝臓、肺、腎臓等と共通の発生メカニズムを有することから、歯の器官構築技術の開発は、多くの器官形成に応用可能な技術となります。そこで細胞の3次元構築技術を用いて、歯の人工的な誘導技術の開発を行っています。

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