臨床薬学部門Clinical Pharmacokinetics(2) がん幹細胞とがん幹細胞ニッチを構成する細胞における代謝機構変容機構の解明(3) 慢性腎臓病時の薬物代謝機能の変化に伴う他臓器異常の[Research]The circadian rhythm, which regulates various body functions, is transcriptionally controlled by a series of clock gene clusters. Clock genes encoding transcription factors that regulate circadian rhythms may inform chrono-modulated drug therapy, where time-dependent dose alterations might aff ect drug effi cacy and reduce side eff ects. We investigate the mechanism of circadian rhythms in drug metabolism and excretion. On the other hand, clock genes are related to the pathology of various kinds of diseases, cancer, chronic kidney disease (CKD) and hepatotoxicity. We investigate the role of cancer stem cells (CSC), chronic kidney disease (CKD), hepatotoxicity, and cognitive dysfunction based on the circadian clock. Aging in humans is a worldwide problem; it induces sleep disorders and disruption of the circadian rhythm. We develop a simple method for the synchronization of drug metabolism and clock genes in the body is required.【代表論文】1. Tsuruta A, Shiiba Y, Matsunaga N, et al. Mol Cancer Res 2022.2. Yoshida Y, Matsunaga N, et al. Nature Commun 12, 2783, 2021.3. Ogino T, Matsunaga N, et al. eLife 10, e66155,2021.4. Matsunaga N, et al. Biochem Biophys Res Commun 513,293-299, 2019.5. Matsunaga N, et al. Cancer Res 78,3698-3708,2018.6. Okazaki F, Matsunaga N, et al. Cancer Res 77,6603-6613, 20177. Matsunaga N et al. EBioMedicine 13, 262-273, 2016. 8. Hamamura K, Matsunaga N, et al. J Biol Chem 291:4913-4927, 2016. 9. Matsunaga N et al. J Invest Dermatol 134:1636-1644, 2014.10. Okazaki H, Matsunaga N et al. Cancer Res 74:543-551,2014.11. Matsunaga N et al. Mol Pharmacol 81: 739-47, 2012. 12. Okazaki F, Matsunaga N et al. Cancer Res 70: 6238-6246, 2010. 13. Matsunaga N et al. Hepatology 48: 240-251, 2008.機序解明 近年の分子生物学的解析手法の発展に伴い、個人の遺伝子配列の違いを基にした適切な治療薬の選択が行われつつあります(遺伝薬理学)。遺伝薬理学は、薬効や副作用などの薬物応答性に関連する遺伝的要因を見出し、個人に合った薬を適切に使い分けることを目指しており、抗がん剤による副作用リスクや発がんリスクの予測、さらに薬物の用量調整などに応用されています。しかしながら遺伝子の配列情報では説明の出来ない薬物応答性の個人差も認められていることからもより詳細な研究が必要とされています。 一方で、薬物の効果や副作用の発現は投薬時刻により変動(個体内変動)します。この個体内変動を制御する機構は時計遺伝子と呼ばれる遺伝子産物により制御され、薬物の体内動態や薬理作用発現に関連する因子の発現にリズミカルに影響を及ぼすことで薬効に個体内変動が生じます。よって薬物治療の個別化や最適化のさらなる充実を図るには、薬効の個体間変動に加えて個体内変動に着目した研究の充実が必要といえます。 生体の個体内変動に着目した創薬・育薬・医療機器開発に関する研究を行っています。(1)薬物代謝酵素の個体内変動機構の解明 服用した薬物の体内濃度において薬物代謝酵素は重要な役割をしています。一般的に薬物は薬物代謝酵素で代謝され解毒されますが、一方で代謝活性化され毒性を示す薬物もあります。またこの薬物代謝酵素の遺伝子の変異が原因で、正常なタンパク質が生成できず薬物の代謝に異常を引き起こし個人差が生じることが知られています。その一方で、これら代謝酵素の発現には個体内変動が認められることから、同じ用量の薬物を服用しても体内における薬物濃度に差が生じ、薬物の効果や副作用に影響します。このような薬物の効果や副作用に関する個体内変動機構について解析を行っています。 近年の詳細ながんの病態解析により、がん組織は遺伝的に不均一な細胞群で構成され、これら遺伝的不均一性は浸潤・転移・再発などとの関連性が指摘されています。乳がん組織では、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)の活性が高値を示す幹細胞様の細胞(がん幹細胞)と活性が低い細胞が認められます。がん幹細胞の腫瘍組織中の存在率は数%程度ですが、高い自己複製能、腫瘍形成能、高転移性能を併せ持ち難治性乳がんの治療標的として注目されていま教 授 松永 直哉[博士(薬学)]Professor Naoya Matsunaga, Ph. D.講 師 濵村 賢吾[博士(創薬科学)]Lecturer Kengo Hamamura, Ph. D. 助 教 吉田 優哉[博士(薬学)]Assistant Professor YuyaYoshida, Ph. D.す。またこれらがん幹細胞のがん組織中における動態に個体内変動があることが明らかとなっています。現在これら機構をさらに詳細に解析して新たながん治療(創薬・育薬)研究をしています。 本来の薬物代謝酵素やトランスポーターの機能は、生体の内因性分子の代謝や輸送を担っています。よってこれら代謝関連分子の異常は様々な病態に影響を及ぼします。慢性腎臓病 (Chronic Kidney Disease; CKD)は、腎機能が50%以下の状態が慢性的に続く病態の総称を指します。本国における透析患者数は30万人に及び、8人に1人がCKDに罹患していると推定されています。CKD治療は、薬物や透析による対症療法がメインなる一方で他の二次的疾患を併発するため様々な薬物療法が行われますが、腎障害による薬物代謝能の低下が生じるため、薬物療法に細心の注意が払われています。これまでに、肝臓の薬物代謝酵素の発現量や活性が健常時と比較して低下しビタミンAの生体内での蓄積が生じてさらに腎臓や心臓など他臓器の炎症や機能障害を増悪するなどの新たな病態悪化機構を明らかにしています。現在これら機構をより詳細に解析し新たなCKD治療(創薬・育薬)研究をしています。分野連絡先分野連絡先松永 直哉(Naoya Matsunaga)松永 直哉(Naoya Matsunaga)TEL:092-642-6656E-mail:matunaga@phar.kyushu-u.ac.jp濵村 賢吾 (Kengo Hamamura)TEL:092-642-4820E-mail:hamamura@phar.kyushu-u.ac.jp吉田優哉(Yuya Yoshida)TEL:092-642-6658E-mail:yoshida@phar.kyushu-u.ac.jp教 授 松永 直哉Prof. Matsunaga講 師 濵村 賢吾Lecturer Hamamura助 教 吉田 優哉Assistant Prof. Yoshida10薬物動態学分野
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