九州大学 大学院薬学府・薬学部 2023
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臨床薬学部門LGP107LGP96LGP85局在化プロテオミクスによるリソソーム膜タンパク質の網羅的解析分子制御機構解析タンパク質・脂質・糖質分解変性タンパク質除去栄養状態や情報の監視・制御病原体排除リソソーム生合成および生理機能の分子制御機構Pharmaceutical Cell Biology【生体高分子代謝プロジェクト】 細胞の中には生体膜で囲まれた様々な細胞小器官(オルガネラ)が存在し、それぞれ独自の機能を有している。リソソームはその内部が酸性(~pH4.5)の環境を有するユニークなオルガネラであり、細胞内および外の生体高分子(タンパク質、脂質、損傷したオルガネラ、細菌、ウイルスなど)の分解に働いている。また、生じた分解産物はリソソームの外に運び出された後、新たな生体成分の合成に再利用されるため、リソソームは細胞内の代謝のバランスを厳密に制御することで、細胞の正常な機能発現と生存に大きく貢献している。このようなオルガネラ独自の機能は、そこに存在するタンパク質に依存するため、2つの研究課題を通してリソソーム機能を分子および細胞レベルで解明することを目指している。  (1) リソソーム膜タンパク質の細胞内局在化機構:細胞がどのようにして他のオルガネラタンパク質からリソソームタンパク質を見分け、リソソームへと正確に運ぶのかを解明する。(2) 新規リソソームタンパク質の同定:リソソーム膜タンパク質を網羅的に解析し、新規リソソーム膜タンパク質の機能を細胞レベルで明らかにする。【内外環境応答・代謝酵素制御プロジェクト】 生命や健康を維持するためには、必須栄養素の摂取と適切な環境が保全されていなければならない。しかし、食品に健康障害性物質が混入する事例が多く知られており、環境の劣化の進行も危惧されている。私たちは、外来の有害化学物質の有害性の根拠、並びに有害性を消去しようとする生体応答を分子レベルで理解することを目標として研究を進めており、外来性有害因子から生命や健康を衛(まも)る薬学を目指している。(1) ダイオキシン類の次世代への影響とその機構の解析:環境汚染を介して食品に混入するダイオキシン類は動物に種々の障害を引き起こす。特に、妊娠動物の曝露によって児に生じる障害は、次世代の健全性を脅かし、より少量のダイオキシンによって発生することから問題が深刻である。私たちはこの障害の機構を解明し、その基盤の上で問題の解決を目指して研究を進めている。(2) 薬物代謝酵素の機能的連携:環境や食物に含まれる生体異物を含めて、薬物や毒物は体の中で代謝を受けて多くの場合不活性化される。この反応が進行するには薬物代謝酵素という触媒が必要である。薬物代謝酵素には多くの種類があり、分野連絡先分野連絡先ダイオキシンによる次世代影響:胎児・新生児への影響と育児母への影響の複合機構TCDD: 最強毒性のダイオキシンである2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin生体の恒常性維持神経変性疾患(アルツハイマー・パーキンソン病)抑制メタボリックシンドローム・発がん抑制免疫応答ウイルス感染防御19 このような研究を通して、リソソーム機能の異常により引き起こされる発がん、感染症、心不全、神経変性疾患およびメタボリックシンドロームなどの原因解明および新薬開発に繋がることを目指している。  教 授 田中 嘉孝[薬学博士]Professor Yoshitaka Tanaka, Ph. D.准教授 石井 祐次[薬学博士]Associate Professor Yuji Ishii, Ph.D.助 教 廣田 有子[博士(薬学)]Assistant Professor Yuko Hirota, Ph. D.助 教 藤本 景子[博士(薬学)]Assistant Professor Keiko Fujimoto, Ph. D.[Research] Our laboratory focuses on two main themes; metabolism of biological macromolecules and chemical substances including environmental chemicals and drugs. Cells maintain homeostasis through synthesis and degradation of biological macromolecules such as proteins, lipids, oligosaccharides, and so on. Lysosomes are acidic organelles functioning the degradation of biological macromolecules, and dysfunction of lysossomes causes several kinds of diseases like cancer and neurodegeneration. Therefore, we tackle research to identify the protein machinery that regulates protein traffic to lysosomes (Project 2) in gene and protein level and to identify novel lysosomal membrane proteins (Project 1). We are also involved in the following toxicological areas: the molecular mechanism of dioxin toxicity (Project 1); and functional cooperation of phase I and II drug metabolizing enzymes (Project 2) in molecular and individual level. In the Project 1, our main interest is focused on the molecular mechanism underlying dioxin-produced disorders in next generations. In addition, we are trying to establish a new concept in the Project 2.  【代表論文】1. A small GTPase, human Rab32, is required for the formation of autophagic vacuoles under basal conditions. (2009), Cell. Mol. Life Sci., 66: 2913-2932, Y. Hirota and Y. Tanaka2. Intracellular dynamics and fate of a humanized anti-Interleukin-6 receptor monoclonal antibody, Tocilizumab (TCZ). (2015), Mol. Pharmacol., 88: 660-675, K. Fujimoto et al.3. Investigation of the endoplasmic reticulum localization of UDP-glucuronosyltransferase 2B7 with systematic deletion mutants. (2019), Mol. Pharmacol., 95: 551-562, Y. Miyauchi et al. 4. The aryl hydrocarbon receptor is indispensable for dioxin-induced defects in sexually-dimorphic behaviors due to the reduction in fetal steroidogenesis of the pituitary-gonadal axis in rats. (2018), Biochem. Pharmacol., 154: 213-221, Y. Hattori et al.5. Elevation of endocannabinoids in the brain by synthetic cannabinoid JWH-018: mechanism and eff ect on learning and memory. (2019), Sci. Rep., 9:9621, R.S. Li et al.これまでは各々が独立して働くと考えられていたが、私たちは別種の酵素が結合して互いの働きを変化させることを発見した。この研究は薬物や毒物の代謝能・解毒能に関する個体差を考える際に極めて重要な知見を提供する可能性がある。田中 嘉孝(Yoshitaka Tanaka)田中 嘉孝(Yoshitaka Tanaka)TEL: 092-642-6618 FAX: 092-642-6619 E-mail: ytanaka@phar.kyushu-u.ac.jp URL: http://saisei.phar.kyushu-u.ac.jp/ http://eisei.phar.kyushu-u.ac.jp/教 授 田中 嘉孝Prof. Tanaka准教授石井 祐次Associate Prof. Ishii助 教 廣田 有子Assistant Prof. Hirota助 教 藤本 景子Assistant Prof. Fujimoto細胞生物薬学分野

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