臨床薬学部門Global Healthcare 生命現象の根底には蛋白質を始めとする生体分子間の相互作用が必ず存在しています。疾患関連蛋白質の相互作用を理解することは疾患メカニズムを理解することに直結し、同様に、その相互作用に対する制御分子の開発は医薬品の開発に直結します。当研究室では、高度な分子間相互作用測定技術を駆使して癌・炎症性疾患・感染症等に関わる生体分子間相互作用への理解を深めるとともに、その相互作用を制御可能な分子種の開発を行っています。そうした「分子種」の代表例として低分子化合物・ペプチド・抗体が挙げられます。当研究室ではそれらに加え、蛋白質工学の技術を最大限に活用し、画期的な創薬モダリティをデザインすることも目指します。 “百聞は一見に如かず”当研究室では、NMR、X線結晶構造解析、クライオ電子顕微鏡などの高分解能技術を活用して標的蛋白質の構造を決定する(=見る)研究を推進しています。私たちがこれまで構造決定してきた蛋白質は多岐にわたり、多様な分子量・蛋白質機能・薬剤としての可能性を有するものです。このような生体高分子の構造を決定することによってその形状・立体配置を可視化できるのは勿論、薬剤やリガンド・基質の蛋白質に対する結合様式を解明することも可能になります。それによって例えば、蛋白質表面にある薬剤結合ポケットを解析し、部位特異的変異導入と併用することで化合物スクリーニングから得られたヒット化合物を最適化する、いわゆるQSAR(Quantitative Structure-Activity Relationship)と呼ばれる研究を強力に推進できます。さらには、抗原に結合する抗体の構造を解明できればその相互作用を理解し、よりよいワクチンのデザインへ研究が展開していくことも期待されます。このように、構造解析は当研究室における研究活動の中心軸となっています。 さらに、蛋白質-蛋白質間相互作用や蛋白質-リガンド間相互作用を精密解析するには、盤石な物理化学的理論に裏打ちされた解析技術が欠かせません。薬剤スクリーニングや免疫動物からの抗体スクリーニングの初期段階では、非常に多くの候補化合物や候補抗体クローンが取得されることも珍しくありません。その中か教 授 カアベイロ ホセ[博士(理学)]Professorr Jose M.M. Caaveiro, Ph. D.講 師 谷中 冴子[博士(生命科学)]Lecturer Saeko Yanaka, Ph. D.助 教 妹尾 暁暢[博士(工学)]Assistant Professor Akinobu Senoo, Ph. D.ら強力に標的蛋白質に結合する化合物や抗体を選抜するためには、等温滴定型カロリメトリー(ITC)や表面プラズモン共鳴(SPR)といった“定量的に相互作用を解析する手法”が欠かせません。その様な手法による解析を経て真に有望な薬剤候補となる化合物や抗体を選抜することに私達はとりくんでいます。高感度かつ精緻な生体分子間相互作用解析の情報を提供する物理化学的手法は今や、当研究室のみならず広く国内外の製薬企業において欠かせない技術になっています。分野連絡先分野連絡先[Research]The laboratory of Global Healthcare promotes research in protein-drug discovery, and catalyzes the emergence of next-generation students with a deeper understanding of global issues. We investigate important diseases, such as neurodegenerative diseases, cancer, chronic pain, and infectious diseases. We also design and develop the future generation of pharmaceutical products to combat human disease and suffering. These products include novel chemical compounds and drugs, new modalities of antibodies, and vaccines against viruses. We employ state-of-the-art molecular and structural technologies to understand the basic principles of disease, which are used as the basis to elaborate novel therapeutic solutions. 【代表論文】- Yanaka et al. (2023) Front. Immunol. 1090898- Torralba et al. (2022) Commun. Biol. 5:1265- Yanaka et al. (2022) Int. J. Mol. Sci. 76:12-17- Kinoshita et al. (2022) Prot. Sci. 31:e4450- Yanaka et al. (2022) J. Biomol. NMR. 76:17-22- Valenciano-Bellido et al. (2022) J. Biol. Chem. 298:101995- Takahashi et al. (2022) BBRC. 596:22-28- Senoo et al. (2021) Commun. Biol. 4:1041- Rujas et al. (2021) iScience 24:102987- Oyama et al. (2021) BBRC 558:114-119- Maenaka et al. (2021) Seibutsu Butsuri 61:2- Caaveiro et al. (2021) Methods Enzymol. 469:277- Ishii et al. (2020) J. Biol. Chem. 296:100176- Rujas et al. (2020) Cell Rep. 32:108037- Akiba et al. (2019) Sci. Rep. 9:15481- Morante et al. (2019) Toxins 11:E401- Shindo et al. (2019) Nat. Chem. Biol. 15:250-258- Tashiro et al. (2018) ACS Chem. Biol. 13:2783-2789- Tashima et al (2018) Commun. Biol. 1:33- Miyanabe et al. (2018) J. Biochem. 164:65-76- Caaveiro et al. (2018) Seikagaku 90:279-289- Kiyoshi et al. (2017) Int. Immunol. 29:311-317- Rujas et al. (2017) J. Mol. Biol. 429:1213–1226カアベイロ ホセ(Jose M. M. Caaveiro)カアベイロ ホセ(Jose M. M. Caaveiro)TEL :092-642-6662E-mail:jose@phar.kyushu-u.ac.jpURL : http://global.phar.kyushu-u.ac.jp教 授カアベイロ ホセProf. Caaveiro講 師 谷中 冴子Lecturer Yanaka助 教 妹尾 暁暢Assistant Prof. Senoo22グローバルヘルスケア分野
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