九州大学 大学院薬学府・薬学部 2023
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創薬科学部門Pharmaceutical Synthetic Chemistry1. 天然有機化合物(天然物)や生体分子を起点とした新しい生物活性物質の創製研究2. 複合糖質の機能解明を志向した新しい機能性複合糖質分子の創製31 薬物分子設計学分野は、“新しい分子”を創り出すことで、薬学・生命化学研究に貢献することを目的としています。様々な化学・生物の知見を取り入れて“新しい分子を設計”し、それを“有機化学”を駆使して自分の手で創り、活性試験によって設計分子の機能を評価する研究を展開しています。以下、取り組んできたテーマの一部を紹介します。 天然物や生体分子(タンパク質・糖質・脂質など)は、独特の構造を持ち、しばしばユニークな生物活性を示します。しかし、毒性や物性の問題などで、天然物そのものを研究・臨床応用できるケースは少ないです。私たちは、天然物の欠点を克服できる新しい分子を、天然物の構造を元に設計・合成し、その機能を検証する研究を展開してきました。一例として、ホオズキ由来の酸化ステロイドであるフィサリン類を起点とした新しい抗炎症物質の開発、spectomycin類の合成とタンパク質SUMO化阻害に関する研究に取り組んできました。最近では、コレステロール関連研究、分裂酵母の窒素源カタボライト抑制を解除するNSFに関する研究などにも取り組んでいます。 糖質がタンパク質や脂質などに結合した複合糖質は、免疫応答や細菌・ウィルスの感染、細胞の増殖・分化など、生命活動に重要な機能を果たしていると考えられています。しかし、複合糖質は体内に存在する酵素によって、容易に分解されてしまうことから、創薬(研究)利用が困難です。私たちは、酵素に分解されず、元の複合糖質の機能を維持できる、複合糖質アナログの分子設計・合成・機能解明に取り組んでいます。また、複合糖質-タンパク質相互作用解析に役立つ新規光反応性官能基の開発や、複合糖質を分解する酵素の役割解明に貢献できる分子の設計・開発にも挑戦しています。 現在のメンバーは、4年生・研究生・大学院生・教員合わせて、計28名です(令和5年度4月)。当分野では、学生の“自主性”と、メンバー内の“コミュニケーションや対話”を重視し、明るく・前向きに研究活動を邁進することに心がけています。学生の皆さんには、既存の枠に留まることなく、未知の世界に挑戦するメン教 授 平井  剛[博士(理学)]Professor Go Hirai, Ph.D.助 教 寄立 麻琴[博士(理学)]Assistant Professor Makoto Yoritate, Ph.D.助 教 的場 博亮[博士(薬科学)]Assistant Professor Hiroaki Matoba, Ph. D.タリティーを養っていただき、創薬・化学分野、もしくは薬剤師として、将来活躍できる人材になって欲しいと思っています。分野連絡先分野連絡先[Research]Our group is focusing on several research projects based on synthetic organic chemistry. (1) Design, synthesis, and biological (biochemical) evaluation of new bioactive molecules based on natural products and biomolecules, (2) Design and development of new molecular tools for studies on functions of glyco-conjugates.【代表論文】1. Takahiro Ikazaki, Eri Ishikawa, Hiroto Tamashima, Hisako Akiyama, Yusuke Kimuro, Makoto Yoritate, Hiroaki Matoba, Akihiro Imamura, Hideharu Ishida, Sho Yamasaki, and Go Hirai*, Ligand-controlled Stereoselective Synthesis and Biological Activities of 2-Exomethylene Pseudo-glycoconjugates: Discovery of Mincle-Selective Ligands, Angew. Chem. Int. Ed. e202302569 (2023).2. Keiya Uezono, Risa Maeda, Makoto Yoritate, Hiroaki Matoba, Go Hirai*, Modification of C3-position of 2,3-Dehydro-2-Deoxy-N-Acetylneuraminic Acid with An Acetic Acid Equivalent, Chem. Lett. 52, 71-74 (2023).3. Hiroki Yasutomi, Daiki Takeda, Makoto Yoritate*, Shuhei Higashibayashi, Takeshi Sugai, Go Hirai, Transition-Metal-Free β-Selective C-Glycosylation of β-Glycosyl Boronate via Stereoretentive 1,2-Migration, Synlett 34, 347–352 (2023)4. Takahiro Moriyama, Daiki Mizukami, Makoto Yoritate, Kazuteru Usui, Daisuke Takahashi, Eisuke Ota, Mikiko Sodeoka, Tadashi Ueda, Satoru Karasawa, Go Hirai*, Eff ect of Alkynyl Group on Reactivity in Photoaffi nity Labeling with 2-Thienyl-Substituted α-Ketoamide, Chem. Eur. J. 28, e202103925 (2022)5. Go Hirai*, Marie Kato, Hiroyuki Koshino, Eri Nishizawa, Kana Oonuma, Eisuke Ota, Toru Watanabe, Daisuke Hashizume, Yuki Tamura, Mitsuaki Okada, Taeko Miyagi, and Mikiko Sodeoka*, Ganglioside GM3 Analogues Containing Monofluoromethylene-Linked Sialoside: Synthesis, Stereochemical Effects, Conformational Behavior, and Biological Activities, JACS Au1, 137-146 (2021)平井  剛(Go Hirai)平井  剛(Go Hirai)TEL/ FAX:092-462-6603E-mail:gohirai@phar.kyushu-u.ac.jpURL:https://gohirailab.com教 授 平井  剛Prof. Hirai助 教 寄立 麻琴Assistant Prof. Yoritate助 教 的場 博亮Assistant Prof. Matoba薬物分子設計学分野

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