三重大学 生物資源学部・大学院 生物資源学研究科 学部案内2019
10/28
地球環境学教育コースの研究室を紹介します共生環境学科 気象・気候ダイナミクス猛暑や冷夏、寒波や豪雪や暖冬、異常多雨や干ばつ、北極の海氷の減少、地球温暖化。これら地球規模での異常気象や気候変動が「なぜ?」起こっているのか。この「なぜ?」に対する完全な答えを人類はまだ得ていない。研究室ではこれらの解明に挑んでいる。熱帯や北極の異変が日本の異常気象に及ぼす影響などの、地球規模の気象研究と、黒潮など日本周辺の海が異常気象や台風・豪雨などに及ぼす影響などのローカルな気象の双方を、練習船を用いた海洋上の気象観測や陸上の気象観測、そして地球全体や日本周辺の大気の流れや気温の変化の数値シミュレーションによって研究を行っている。気象解析予測学気象は私達の社会経済活動と密接に関わっている。このため、例えば気象庁は、数日先までの短期予報、1週間先までの中期予報、半年後までの長期予報など、各種の天気予報を公表している。しかし、特に中長期予報の社会への応用はまだまだ不十分である。一方で、この天気予報作成のために世界各地で観測された過去の気象データが蓄積されている。こうした気象に関する様々なデータの解析を通じて、「気象メカニズムの理解の深化を通じた気象予測精度向上への貢献」と「気象予測データの社会への応用」を行うことが当研究室の目標である。水環境・自然災害科学水を「自然の恵み」ととらえるか、「災害を起こす脅威」ととらえるか?当分野では両方の観点から「水」を考え、良好な水環境を守るとともに水災害から人を守るための教育・研究を行っている。学問分野的には、水文学、水資源工学、河川工学、自然災害科学ということになる。水循環の中では、降水や洪水といった辺りを重視し、自然災害科学の中では、豪雨災害、洪水災害、地震(特に南海トラフ地震)に重点を置いている。「水の教育・研究」と「地震の教育・研究」の両方を行っているところはあまりないと思うが、対象物が少し違うだけで、手法的には「統計的手法」「非線形科学的手法」を共通して用いるので、我々にはあまり違和感がない。土壌圏システム学地球の表面を覆う土壌圏は多くの動植物の生産・活動の場であり、土壌圏と水圏、気圏、生態圏との間の水・エネルギー・物質の循環システムは気候形成や植生の状態を強く支配している。特に、凍土地帯の循環システムは温暖化にともなう寒冷地の農業利用や気候変動へのフィードバックの見地からも重要である。土壌圏におけるこれらの循環の実際をとらえ、今後の変化を予測し、健全な循環システムの持続を目指す教育研究を行う。緑環境計画学森林・緑環境の機能評価を基礎に、森林生態系や生物多様性の保全に配慮した森林の取り扱い方法について研究している。樹木個体や林分集団の継続調査を行い、森林などの陸上生態系の環境応答の評価とその手法開発、乾燥地植物の光合成と水利用に関する戦略の解明、また熱帯林など、世界の森林資源の適正な管理手法の開発など、地域の問題からグローバルな課題まで、取り組んでいる。具体的には、「持続可能な森林経営」を目指して、植物の生き方(生理生態)や環境との関わり(環境応答)、森林管理の基準・指標作り、森林成長予測、住民参加型森林計画などの観点から研究している。環境解析学本研究室では、贅沢ではないが十分に自由で安全で快適な社会の実現を目指している。我々は、世界の様々な側面を評価する。例えば、安全と快適は両立しないことが多い。風を切って走るオートバイは楽しいものだが、通常より大きな危険を冒すことになる。また、地域の環境をよくすることと地球の環境を良くすることもしばしば両立しない。そして世界の様々な側面の評価に基づいて、十分に自由で安全で快適な社会のための適切な地域の管理方法を考える。本研究室では、世界の様々な側面を評価し地域の管理方法を考えるときに、景観を利用する。というのは世界の様々な側面が表出され、人々に認知されるのが景観だと考えているからである。フューチャー・アース学地球規模で懸念される環境問題に対して、現在の科学は社会に「わかりやすい」情報として浸透し、将来の適応・対処を考える上で適切に扱われているのか?その反省から、地球環境科学は地球生命圏の多様な環境を理解し、さらに社会と協働する“超学際的”な思考を発展させる必要がある。本研究室では、気候・地形・植生・雪氷等の環境変化が人間社会に与える影響を、現地調査を基本に、衛星データ解析、地理情報などの空間拡張の技術を用いた研究手法と重ね合わせて、近将来の時間スケール(30年)を念頭に、地球生命圏で起こりえる変化やその脆弱性・可塑性への分野横断的理解を進める教育研究を行う。土壌圏循環学土壌・植生・大気で構成される土壌圏では、水分、化学物質、熱、ガスの流れが生じている。この土壌圏中の物質移動のメカニズムを明らかにし、移動予測モデルの構築を目指した教育研究を行う。土壌に投入された有機物は、分解されて無機化され、二酸化炭素は光合成により、また窒素成分は再び植物に取り込まれる。この土壌圏における窒素・炭素循環に対して、土壌中の水分移動、植物による吸水、栄養成分の吸収に注目したモニタリング実験と数値シミュレーションにより現象を解明する。また、土壌中の化学物質移動の研究を応用し、より精度の高い土壌中のセシウムや汚染物質の移動予測を目指す。海洋気候学今日大気中の二酸化炭素などの増加で気温が上昇し、地球温暖化がいろいろな異常気象の原因ではないかと言われている。海洋でも北極海の海氷の減少や深層水温の上昇などの異常海洋現象が報告されている。この研究室では、関連する海洋気候変動や海洋大循環の流速、水温、塩分、密度などの変化を調べている。手法には、三重大の練習船「勢水丸」による直接海洋観測とその結果の解析、コンピュータを用いた数値モデル実験、日本海洋データセンターなどに蓄えられた長期観測データの解析などがある。大切な地球環境を守るため、皆さん、地球気候変動の核となる海洋のいろいろをいっしょに調べましょう。未来海洋予測学地球の表面積の7割を占める海は、大気を暖めたり冷やしたり、水蒸気を大気に与えたりすることで、地球の気候に大きな影響を及ぼしている。海が猛暑や寒波、大雨や干ばつの原因となっていることも多いと考えられているのである。しかしながら、海洋と大気の変動システムは複雑で、気候変動における海の役割を明らかにするために今後解明していかなければならない研究課題が数多く残されている。本研究室では、集中豪雨、低気圧、台風など様々な大気現象に対して海がどのような役割を果たしているのかを明らかにしていくとともに、海の変化が将来の気候にどのような影響を与えるのかを調べている。地球システム進化学“地球とともに生きる”~地球温暖化・エネルギー等の人類的課題に対し未来展望を明らかにするためには人間を含む地球をシステムとして理解することが大切である。本研究室では、(1)「これまでの地球」について、生命進化、白亜紀温暖期、恐竜絶滅、氷河期の謎、など地球史イベントを調べ、地球がいかに微妙なバランスのもとで成立しているか、を研究している。また、(2)「これからの地球」~持続的な地球システムについて、自然のエネルギーを利活用した地球とともに生きる具体的ビジョンについて研究し、自治体、一般企業、市民の方々といっしょに実践的な未来ビジョン作りに取り組んでいる。学科・研究室の教員紹介については、教職員紹介パンフレットを参照してください(裏表紙にQRコードがあります)08Faculty of Bioresources 2019
元のページ
../index.html#10