室蘭工業大学 大学案内2022
20/52

19システム理化学科の研究認知症は脳内にアミロイドと呼ばれるタンパク質が凝集・蓄積することが原因のため、その凝集を抑制する物質が予防や治療に有効です。体内ではタンパク質が自己集合し、生き物が生きる上で必須の様々な機能が生み出されていますが、変性したタンパク質の自己集合は、認知症やリウマチ、糖尿病をはじめ様々な病気の原因にもなります。タンパク質の「正常・異常」な自己集合は紙一重の違いです。これらを比較することで、認知症等の原因を解明し、予防や治療に繋げていくことができます。タンパク質は非常に小さな物質で、光学顕微鏡では観察できません。そこで、量子ドットと呼ばれるナノメートルサイズの蛍光物質を結合させて顕微鏡で観察できるようにし、タンパク質の一種「アミロイドβ」の凝集を世界で初めて四次元観察 ( 三次元画像の時間観察 ) することに成功しました。さらにこの方法を応用して、認知症の元となるアミロイドβの凝集を抑制する物質を効率的に見つけるシステムを開発しました。実際に、このシステムを用いて様々な天然物を調べたところ、シソ科植物が高い凝集抑制活性を持つことが分かりました。今後は、北海道の農業食品分野とも協力して、最大限の凝集抑制効果を発揮するために適した栽培方法、収穫時期、加工方法を研究し、将来的には認知症予防効果の高い食材やメニューの開発などにもつなげていきたいと考えています。北海道の天然資源で認知症予防システム理化学科 化学生物システムコース 徳樂清孝 准教授災害時に切れない通信やネットワークの研究に力を注いでいます。東日本大震災の時、私は海外に留学していましたが、親が被害の大きかった宮城県・南三陸町に住んでいました。私は、親に電話しても繋がらず、安否も分からないという不安な日々を過ごしました。結果的に電話が繋がったのは3日後でした。その経験から、災害時でも切れないネットワークや電話を開発しようと思いました。 災害などで携帯電話基地局がダメージを受けた際、スマホなどの端末同士で情報をやり取りできるD2D(Device to Device)通信の基礎技術を開発しています。さらにこの技術を発展させて、ドローンなどを活用して、広域で災害時の通信手段を確保できる新手法の開発に着手しており、既に実機を使ったテストに入っています。今後、企業や他の研究機関などと連携しての実用化を目指しています。実用化されれば、災害発生時に避難ルートを探したり、安否を伝えるなどの活用が期待できます。システム理化学科 数理情報システムコース 董冕雄 教授災害時にも切れないネットワークをつくる世界を驚かせる 未知の合金をつくるシステム理化学科 物理物質システムコース 雨海有佑 准教授世界的にも殆ど研究例がない「強相関アモルファス合金」の物質開発をしています。アモルファス合金とは金属でありながら、元素の配列に規則性がなく無秩序に結合している金属です。そのため、結晶化合物として存在しない原子の組み合わせで合金を作ることが出来ます。つまり、まだこの世に存在しない未知の合金を合成することができます。未知なことが多いアモルファス合金には、思いもよらない特性を示す合金を発見する可能性に満ちています。現在は「DC高速スパッタリング法」という方法で希土類元素のひとつであるセリウム(Ce)を中心とした希土類アモルファス合金を作製しています。 アモルファス合金は自然に存在せず、セリウムを含むアモルファス合金については,ほとんど知られていないので、その性質もよくわかっていません。 これまで数多くのCe系アモルファス合金を作製し、金属でありながらプラスティックにも匹敵する熱膨張を示すもの、超伝導や重い電子状態を実現するもの等を発見しました。Ce系アモルファス合金の研究は殆ど前例がないので新発見に溢れています。世界が驚く未知の合金をつくり、室蘭工大から世界に向けて発信していきます。物理物質システムコース化学生物システムコース数理情報システムコース

元のページ  ../index.html#20

このブックを見る