室蘭工業大学 大学案内2022
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27生産システム工学系専攻 機械工学コース 山口海斗さんより静かな生活を目指して -サイレンサー内の騒音源の静音化の関する研究-石灰石(炭酸カルシウム)は日本で自給自足が可能な数少ない資源の一つです。私たちは「結晶炭酸カルシウム」の素である「非晶質炭酸カルシウムの超微粒子(コロイド粒子)」の合成に成功しました。私は、歯や骨の構成物質である「アパタイト」と呼ばれる「リン酸カルシウム化合物」の合成を研究しています。結晶相のコントロールは難しいのですが、ヒドロキシアパタイト単一相や、ヒドロキシアパタイトの一部を炭酸基に置換した炭酸アパタイトの合成にも挑戦したいと考えています。非晶質炭酸カルシウムからのアパタイト合成に成功すれば、炭酸カルシウムの「高付加価値化」が期待でき、合成アパタイトを環境材料、医療材料、化粧品などに応用できると考えています。化学活性に富んでいる非晶質炭酸カルシウムを用いることで、従来の合成方法よりも簡単にアパタイトやそれ以外のカルシウム化合物を合成できると考えており、将来的には非晶質炭酸カルシウムを自在に操ることを目標にしています。室工大では学部4年生の時に研究室に配属されます。私は自分の研究を進めたいと思い大学院の進学を決めました。大学院では自身の考えや計画に基づいて研究を行うため「自己管理」が大切です。専門知識に加えて、社会人として必要な能力も培うことができます。環境創生工学系専攻 物質化学コース 澤田未智花さん環境、医療、化粧品などに応用できる炭酸カルシウムをつくる-非晶質炭酸カルシウムを出発源としたアパタイトの合成-工場の発電用エンジンや自動車用エンジンは、エンジン内で燃料を爆発させて駆動力を得るため、爆発音が発生します。その大きさは法律で規制されており、音量を下げるために「サイレンサー」という部品が取り付けられています。サイレンサーにはパンチングメタル板が使われる場合があり、爆発音の圧力を分散したり、排気ガスが流れる際に出る低い音を減らしています。しかし、高速な排気ガスが流れると、パンチングメタル板から高音が発生して、サイレンサーの消音機能を下げてしまうという問題もあります。私は、この高音の発生原因を明らかにして、サイレンサーの性能を向上する方法を研究しています。騒音の発生原因には、いくつかの現象が絡み合っており、研究はまるで「謎解き」のようで面白いです。私は、複数の実験から「気流の乱れ」と「パンチングメタルの振動」に深い関連があることを明らかにしました。これにより、板の特定の位置で起こる振動を抑えるため、振動源である穴を部分的に塞いだ消音対策を考案しました。これにより、騒音はおよそ1/2になり、サイレンサの性能改善へ貢献できました。金属材料の特性(強さや変形しやすさ、錆やすさ等)は、金属内部の目には見えないミクロの世界の状態で決まります。そのため、金属のミクロ世界を知り、制御することは重要です。私の研究は、金属材料に大きなひずみを加える「巨大ひずみ加工」によって、金属のミクロ世界の状態を制御し、様々な特性を向上させて、その仕組をミクロな視点から解明することを目指しています。軽くて強く、錆びにくい優れた金属であるチタンは、変形性能の低さが欠点で、製品を作るときの大きな障壁になっています。そこで、チタンの変形性能の低さを巨大ひずみ加工によって改善させ、その仕組みを電子顕微鏡を用いたミクロ世界の調査によって解明しています。その結果、巨大ひずみ加工によるチタンのミクロな世界の変化を電子顕微鏡によって確認し、チタンをより小さな力で変形させることが可能になりました。今後も研究を進めることで、巨大ひずみ加工が金属のミクロな世界に与える影響をさらに細かく調査し、様々な金属への応用が期待されます。室工大では、独自の挑戦的な研究に多く取り組んでいます。優れた研究環境を備えた室工大で、知識と経験を深めてください。(博士後期課程)工学専攻 先端生産システム工学コース 稲垣 達さんミクロな世界を制御して、夢の金属を作り出す !-巨大ひずみ加工を用いた金属の特性向上とメカニズムの調査-

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