長岡技術科学大学 統合報告書 2022
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09で、自治体から現役の副市長を副学長として任命した前例はありません。その分、責任を感じています。吉田理事がお話しされたとおり、地域にとって大学との連携は非常に重要です。長岡市において、最先端の技学を創生する技大は、地域発展の大きなポテンシャルであり、希望です。建学の精神も地域の歴史と通じるなど、もとより結びつきも強固であり、地域発展の寄与をお願いする一方で、地域の側からの視点や協力により、既に国内外で評価の高い技大のさらなる発展に少しでも役立つことができればと思っています。■ 鎌土:県内にはそれぞれの市に特色があり、課題もあります。長岡市から地域の課題解決に向けて、学術的基盤に基づいた成果を発信することが、本学がこの地にある意義です。髙見副学長には、副市長ならではの視点を、本学でも活かしていただきたいと思います。■ 武田:地域を活性化し、課題解決のためには、それらを担う人材の育成が必要です。本学でも、STEM教育を推進してきましたが、今後はさらに芸術や音楽、文学、哲学といったアート、もしくはリベラルアーツを意味する「A」を加えたSTEAM教育も推進し、有能な人材の輩出に力を入れていきます。そうした本学の人材育成の取組について、学長からご説明願います。■ 鎌土:将来ビジョン「教育」の項目でも明記しているように、本学ではグローバルに活躍できる実践的・創造的能力を備えた技術者の育成を目指しています。ただ、STEAM人材を育成するには、学内の取組だけでは達成できません。そこで、全学生が修士課程に進む前に社会経験を積み、学びを広げる機会をもてるよう、「実務訓練」を行っています。これは、社会での実践力を身につける教育プログラムで、企業ではどのように研究開発を進めているのか、製品などをどのように創り上げているのか、単に工学の知識だけではなく柔軟な思考などを、4〜5か月間かけて学んでもらうものです。実務訓練へ行く学生の内、毎年およそ15〜20%の学生は、海外で実務訓練を行っています。学士課程での企業経験は、自らの研究領域を広げる際に大いに活かされ、修士課程愛媛県出身。昭和53年新居浜高専卒業。昭和55年豊橋技術科学大学工学部卒業、昭和57年同大学院工学研究科修了。昭和57年津山高専助手、平成2年講師。平成3年工学博士(豊橋技術科学大学)。同年長岡技術科学大学助手、平成4年助教授、平成16年教授、平成27年理事・副学長を経て令和3年4月より現職。での学びのモチベーションにもつながります。また、大学院へ進学した学生はリサーチインターンシップも利用できるなど、学内のみならず、企業経験を積むことで、新たな研究へとつなげることができる、横断的・異分野融合的な教育体制を整え、充実した教育プログラムで学生を育成していくのが本学の特徴といえます。産学官協働教育のシステムをさらに強固にしていきたいと考えています。■ 吉田:学生のうちに実社会での研究開発に携わることができるのは、非常に有効な教育プログラムですね。新潟県は起業ベンチャーが少ないといわれています。若い学生が最先端の研究に触れることで、起業意識の醸成も期待できるでしょう。地方であっても、今ではIT技術を駆使すれば、色んな企業や人とつながることができます。例えば、弊社でも実践しているのがメタバースの活用です。期間限定で「ブルボンメタバース」をオープンし、お菓子の魅力や企業の世界観をメタバース上で感じてもらえるよう、コミュニティ空間を作りました。メタバース技術を使えば、物理的な距離感を感じることなく、人と人が身近に出会うことができ、新たなコミュニティが生まれます。かまど しげはる学長知的好奇心旺盛な人材を育成する鎌土 重晴工学博士

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