I 13IIRIMZOSHMZUE21.ディスペンサにより塗布したCuOナノ粒子インク。/2.(1)に大気中でレーザ照射し、Cuが焼結されている様子。/3.CuOナノ粒子の還元積層焼結により造形した10層のCuのピラミッド構造。(1)のCuOナノ粒子インク塗布、(2)の大気中レーザ照射を繰り返し、最後に未照射部を除去して作製。27 フェムト秒レーザを用いた3次元微細造形は、原料内部に集光したレーザパルスの焦点近傍のみで生じる多光子励起光還元析出を利用して金や銀において実現されています。しかしながら、銅(Cu)やニッケル(Ni)などの光還元析出の困難な金属や合金の造形には応用できません。そこで、フェムト秒レーザ照射時に発生する熱エネルギーを熱還元に利用した3次元微細造形を取り組んでいます。これまでにCuやNiの酸化物ナノ粒子を還元剤と混合したインクを調製し、熱還元焼結により金属の2次元・3次元微細造形を行ってきました。特に、レーザ照射速度やパルスエネルギーを変えることで、描画パターンの還元度を制御することができるため、例えば抵抗温度依存性の小さな金属的なCu-richパターンと、逆に温度上昇に伴い抵抗が大きく減少する半導体的なCu₂O-richパターンを選択的に描画形成し、測温部をCu₂O-rich、配線分をCu-richとする、高感度な温度センサの試作へ応用しました。その他、CuOナノ粒子とNiOナノ粒子を混合したインクを用いたレーザ照射速度制御により、熱電対p型Cu₂O/NiOとn型Cu-Niをそれぞれ選択的に作製しました。 また、金属錯体インクを用いたCu,Ni,Coやそれら合金の熱還元析出にも取り組んでいます。フェムト秒レーザ波長に対して透明で、その半波長以下で大きな吸収を示すレーザ波長とインクを選択することで、インク内部へレーザパルスを集光照射したとき、焦点近傍で生じる多光子熱還元により、各種金属を析出できます。 現在は、レーザパルスを原料インクに照射すると、どのように金属還元や金属析出が生じるのか、ピコ秒オーダの時間分解能での現象解明に取り組んでいます。熱の拡散による金属化領域の拡大を制御し、回折限界以下の微小空間のみを金属化できれば、より高機能なセンサの作製や金属配線への応用が期待できます。機械系溝尻 瑞枝 准教授フェムト秒レーザ熱還元を利用した金属の3次元微細造形法の創製未来の世界を輝かせる研究
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