ORHOMOT ODNE28 メタバースが注目を集めていますが、バーチャルリアリティ(VR)の技術を活用してサイバー空間内でコミュニケーションや様々な社会活動を行うことが現実になりつつあります。このような概念はかなり以前から提唱されてきたものですが、通信ネットワークや計算機性能の向上などの技術的環境が整ってきたことでようやく実用的になってきたところに、コロナ禍で社会的な注目が高まったという背景があります。このようなメタバース・VR技術が発展すれば、我々の活動は物理的な空間や距離の制約からこれまで以上に解放されます。移動のためのコスト・環境負荷の削減にもつながりますし、働く場所、住む場所もより自由になり地域格差の解消も期待されます。SDGsにおいてはゴール4,8,9,10,11,13への直接的な貢献が期待できます。 さて、私たちはこのようなメタバース・VRの中核技術である3D映像表示技術の研究に取り組んでいます。現状ではVRと言えばいわゆるVRゴーグルを着けて使うものが思い浮かびます。VRゴーグルは仮想空間に入り込んだ感覚をもたらすことには優れている一方で、装着が煩わしく、いつでも手軽に使えるというわけにはいきませんし、装着してしまうと現実空間での活動が難しくなってしまいます。 そこで私たちは、PCの画面のように機器のそばに行けばすぐに見られる3D映像表示の研究を行っています。3D映像の本質は、視点の位置と方向に応じて見え方が変わることです。VRゴーグルは頭の位置と向きを計測し、それに合わせて画像を作り出すことでこれを実現していますが、利用者が何も装着せずに見るためには、表示したい物体が実在した場合に飛来するはずのたくさんの光線を光学的に再現することが必要です。この代表的な手法として液晶等のディスプレイとレンズアレイを組み合わせるものがありますが、ディスプレイ解像度の限界や、光の回折現象の影響などで性能向上が困難という問題がありますし、球形や円筒形などの平面でない形状を実現することも困難です。そこで私たちは半導体光源やMEMS表示デバイスの高速性を活用し、時分割手法を導入することで高品質な表示を実現する研究を行っています。I電気電子情報系圓道 知博 教授球の中に3D映像が見えるライトフィールド3Dディスプレイ。球形のため周囲の広い範囲から多人数で同時に見ることができる。研究光線の状態を再現するライトフィールド3D映像表示技術の研究
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