長岡技術科学大学 2023 統合報告書
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操作力指令=ゼロ▼−▼物体「相反」の壁物体位置指令令未来の世界を輝かせる研究位置制御の動作1m?N何N出してでも1m先に進もうとする人間はどちらでも状況に応じて対応できる従来の産業用ロボット図1.位置制御に特化したロボットは、本質的に力制御が実現不能力制御の動作図2.位置と力加減の双方を同時に教示して再生力力指令「負荷側加速度制御」に基づく位置/力ハイブリッド動作模擬教示フェーズ+再現フェーズ世界初の独自技術負荷側加速度制御系操作力制御器負荷側加速度指令速度検出ねじれトルク検出操作力検出位置検出力検出動作教示データ ■世界初の独自技術位置検出速度検出電流位置制御器負荷側加速度指令負荷側加速度制御系力制御器ねじれトルク検出ねじれトルクセンサ(操作力検出)電流オペレータ力覚センサ作用力+操作力ツールワーク位置と力を同時に精密再現!力検出25Nagaoka University of Technology Integrated Report 2023 新潟県内で生産される洋食器や工具、包丁等の金物は世界的に有名ですが、金物の研削・研磨工程の技を有する熟練職人の後継者は少なく「持続不可能」になりつつあります。そこで、産業用ロボットによる研磨の自動化を目指して研究開発を実施中ですが、職人技の模擬はかなり難しく大きな壁がいくつもあります。ここではその中の1つをご紹介します。 人間が普段何気なく行っている手作業は、手先位置と力加減の両方を絶え間なく調節することで実現しています。例えば「窓拭き」は、ガラス面の水平方向に「位置制御」を、垂直方向に「力制御」を同時に実行する作業ですが、実は従来の産業用ロボットは位置制御は得意でも力制御が苦手です。(図1)に示すように、位置制御は外力が何ニュートン加わっても指令(命令)された位置を保つ性質を持ち、位置制御性能の向上に伴って外力に打ち勝つように動きます。その反対に、力制御は外部から何メートル動かされても常に指令された力を保つ性質を持ち、力制御性能の向上に伴って外力に負けるように動きます。すなわち全く相反する性質を持つため、位置制御に特化したロボットは本質的に力制御が実現不能になります。つまり、熟練職人の位置は真似できても、電気電子情報系1N?m何m動かされても1Nを保とうとする間接的に制御横倉 勇希准教授力加減は真似できないわけです。 しかしながら抜け道があり、ロボットを所望の加速度に従わせる「加速度制御」を実装した上で、適切な加速度指令を与えると、自然界が自動的に2階積分をしてくれるので位置が制御できます。また一方で、発生させたい接触力の値を質量で除算して加速度指令とすれば力が制御できます。すなわち、位置と力を統一して制御することができます。詳細は割愛しますが、現場用に理論を拡張した「負荷側加速度制御」を礎として、(図2)に示す「位置/力ハイブリッド動作模擬」を提案しており、熟練職人が金物を研磨する際の手先位置と力加減の双方を同時に教示して再生できる技術を開発しています。

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