長岡技術科学大学 2023 統合報告書
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図1.提案技術によるカトラリーの三次元形状計測(上)実験風景(下)実験結果ロボットによる自動研磨に必要となる三次元形状と法線を計測研研究究26 人口減少に伴うものづくりを支える熟練技の消失や、かつての異常気象の常態化による自然災害の激甚化は、我が国が解決すべき大きな課題です。センサ機器やインターネットの発展により、課題解決に役立つはずのデータを観測できるようになりましたが、それで充分でしょうか?例えば大雪による立ち往生を防ごうとした場合、道路のライブカメラ画像から渋滞や事故を予測したり、フェイク情報も混在するソーシャルメディアから自らの状況に合った喫緊の対策を判断したりすることは容易ではありません。 私たちはこの困難を解決するため、様々な種類のデータを統合的・横断的に解析可能とするマルチモーダルAI(人工知能)の研究を行っています。この研究分野は、世界的に注目を集めているChatGPT等の生成AIの基礎にもなっており、「SDGsゴール9:産業と技術革新の基盤をつくろう」への貢献が期待できます。 本学は開学当初から、産学官連携を推進し、地域や産業界の課題解決に貢献してきました。私もこのポリシーに共感し、マルチモーダルAIの研究に基づく様々な情報システムを開発しています。例えば、企業や制御工学の研究者と連携し、新潟県が世界に誇る地場産業であるカトラリー製造を支援する画像計測・検査システム(図1)を開発しています。また、道路電気電子情報系図2.地域の災害リスクを検出し、予兆や対策の候補を提示できるシステムをメタバースに実装しています。原川 良介准教授標示の画像診断技術が企業の製品に組み込まれ、全国の施工業者や自治体等で利用されています(企業と本学で総務大臣賞を受賞)。他にも、学校教員の授業準備を支援する情報検索技術、油脂生産のための細胞データ解析技術、水害・雪害から命を守る行動支援システム(図2)など、いずれも企業・自治体や異分野の研究者と共同で研究開発が進行中です。「SDGsゴール4:質の高い教育をみんなに、ゴール7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに、ゴール11:住み続けられるまちづくりを」も見据え、研究開発成果の社会実装を目指しています。

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